そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.368  イングランド夏紀行10

 五 バスもまたよし
 
 2 コッツウォルズ一日観光(1)
 日本出発の少し前,NHK「趣味の園芸」でイギリスのコッツウォルズのガーデンを柳生真吾さんが訪ねるという特集をしていた。コッツウォルズってどこなんだろう。ガイドブックを見ると,「美しいイギリスのいなかコッツウォルズ」(1日観光)があるではないか。しかも,日本語ガイド付きだという。
 ロンドンに着いた次の日,μ(みゅう)インフォーメーションセンターで予約を入れる。
 当日まずまずの天気。20人もの日本人予約があり,ほかの国の人も入れて定員50名満席という。ガイドはイギリス人のマークさん。初めに英語でガイドをしておいて,次に「大体お分かりでしょうが」と前置きをして日本語でガイドをする。私は英語のガイドはほとんど分かっていないが,日本人のうち半分くらいの人はかなり英語ができるようだ。
 コッツウォルズは,ロンドン,オックスフォードの西に広がる「人と自然の密接な協力によって造り上げられた土地」(現地のガイドブックより)。
 牧草が刈り取られた農場地帯をバスは走る。農場は生け垣で仕切られて誰の所有地か分かるようになっている。しかし,生け垣職人が少なくなって,石垣になってきているとか。
 最初に寄った町バーフォードは,坂道が中央を走っていた。目印になる教会を確認して,路地を巡って家の庭を見るとクレマチスの花が咲いて,咲き終わったものはなぜか毛むくじゃらで。庭を覗き込んでいたら家の人が帰ってきた。こんなときは「イクスキューズミー」なのか,「アイムソリー」なのか。水量豊かなウィンドラッシュ川には水鳥が悠々と泳いでいる。
 ボートンでは昼食をかけてゆっくり散策することにした。ガイドがすすめてくれた田舎の小道を歩いてみよう。バーフォードから続いているウィンドラッシュ川に沿って町や村が広がっているらしい。羊も放し飼いにされていた。本当にのんびりした田舎の風景である。このあたりは土地も家も値段が高いという。余裕のある人たちの別荘地なのだそうだ。庭づくりに精出している家もあった。確かに庭には力を入れているようだ。
 雨が降り出した。イギリスの天気はまことに定まらない。「一日の中に四季がある」とイギリスでは言うそうだが,ほんとうにそうなのかもしれない。雨は少し激しくなって「まあ降ってもたいしたことないよ」と言った私の予報もあてにならなくなった。
 しかし,昼食は取らなければなるまい。なんとかテーブルが空いている店に飛び込んで,席を確保。でっかいハンバーグとチップスを山盛りにした皿とコーヒーがやって来た。雨を避けながら,やっと落ち着いた気分で腹を満たす。
 バス出発の時間が迫っていた。石造りの塀に囲まれた道をバス乗り場に急ぐ。