そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.368  イングランド夏紀行10

 五 バスもまたよし
 
 3 コッツウォルズ一日観光(2)
ブロードウエィといえばアメリカの映画を思いがちだが,こちらは違う。坂道の両側に石造りの商店や家々が立ち並んでいる。よくガイドブックに出ている萱葺き屋根の家もある。居酒屋だろうか。観光案内所のようなところがあったので,入ってコッツウォルズの写真入りのガイドブックを買った(2.99ポンド=約600円)。このガイドブックは四ヶ国語で書かれていて,その一つが日本語なので私にぴったりのものだ。ガイドのマークさんは日本語で説明してくれるが,書いたものは地図1枚ないので,一帯どこをバスが走っているものやらさっぱり分からないし,メモを取っていないと分からなくなってしまう。
 ここは,1時間ほどの自由時間で出発。その間に,妻は小さな小さな置物を買った。ブロードウェイ・ビーコンの丘の頂上に建つブロードウェイタワーを後にして,最後の観光地ブレナム宮殿へ向かう。
 ブレナム宮殿はオックスフォードの北西13キロの所にある。18世紀の初め,スペインの王位継承問題で対立したフランス軍を撃破した公爵ジョン・チャーチルに,アン女王が褒美として下賜したものである。当時この城は建設中であったが,国費で完成させるよう命じた。その後紆余曲折,完成したのは1722年,それを目前にしてチャーチルは亡くなった。
 建築面積28000u,庭園を含む敷地総面積は4600万uという膨大なものである。ここでティータイムになっていた。ティーとスコーンと蜂蜜,ジャムを受け取る。バット(お盆)に配っていた女の人が私を見て何か話しかけてくる。
「シャツのことよ。」
と妻が言う。そうだ,この日私はアテネオリンピックのTシャツを着ていた。一昨年ギリシア旅行のときに買ったものだ。ちょうどオリンピックが始まったばかりで,まさにタイムリーだったのだ。
 天気もよくなったので外のテーブルに席を取る。ティーがうまい。スコーンに蜂蜜をつけていると,なんとミツバチがよってきた。それも何十匹もだ。しようがない,一つはミツバチ用に開けておいて,あわてて食べ終わる。
 外を歩いて見る。芝生の庭が遠くまで広がっている。維持管理の費用に当てるため,施設を貸し出したり,入場料を取ったりしていると言うことだ。この広い芝生だと,サッカー場が何面取れるのだろうか(そんな貸し出しをしているかどうかは分かりませんが)。池のある庭はイタリアン・ガーデン。ローズ・ガーデンや迷路もある。人造湖も景色に取り入れている。
 宮殿の中はゆっくり見る時間がなかったが,バロック様式を基本にして,200あまりの部屋があるという。
 マークさんが言わなかったので帰国するまで知らなかったが,ここは世界遺産になっている。それだったら我が家に世界遺産の本があったのに。事前勉強をしてこられたのに。