そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.374  イングランド夏紀行12


 八 大英博物館
 イギリス最終日は,ハイドパークの散歩とハロッズで買い物,大英博物館の見学であった。ハイドパークについては,すでに「ガーデン」で書いた。ところでその出発の朝,ちょっとしたことがあった。地下鉄が事故のため動かないというのだ。
「それはいったいどうしたことだ。まさかテロではないだろうな。」
 ちょうどアテネオリンピックが開催されたところで世界中がテロの心配をしている中,イラク戦争でアメリカの同盟国として戦争に荷担したイギリスも標的となる可能性がある,などと噂もあるので,ニュースが全く分からない私は余計な心配をする。
 とにかく動いている地下鉄やバスを使って移動することにする。

 ハイドパークのあとハロッズへ。ここは,高級土産物店というところか。品物はいいが値段もそれなりにいい。と言っても,チョコレートなどはどこでもそれほどの違いはないので,入物の袋が土産と思って買う。あと次男に小さなお土産。彼もこの旅行に誘ったのだが,仕事が忙しいのでいっしょにできないということだった。
 昼食は個人個人で注文して食べて,大英博物館へ向かう。地下鉄も少し動き出したらしい。テロではなかったようだ。

 大英博物館。「古今東西の文化遺産が一堂に会している世界最大級の博物館」とガイドブックにうたってあるが,その通りのものすごい博物館。大英帝国が世界に冠たる時代に集めたものばかり。ここに集めるのがいいのか,もとの国に返すのがいいのか,何しろ歴史的価値の高いものばかりだからなんとも言えないところ。
 そんなに多くの時間がないので,1階のメソポタミア,ローマの遺物を見る。一昨年ギリシア旅行のときに見たものと同じようなものが陳列されていた。こうしてみるとその頃の歴史の大きさがまた感じられる。確かクレタ島ではもっともっと多くの遺物を見たように思うから,この博物館の大きさと同時に,その頃の文明の偉大さを感じさせられた。
 他の展示室も急いで回る。
 日本の展示室もあった。しかし,美術品などにそれほど感じるものはなかった。ということは,日本人の歴史や生活や美術がそれほど理解されていないということか。
 ちょうどお茶の作法について実演公開しているところだった。5・60人の席が満員で熱心に見つめていた。客席からステージに上がって作法を習う人の動きに注目し,うなずき笑う客席には日本の文化に対する興味を感じた。

 ロセッタストーンの前で休憩し,外に出ると雨。イギリスはもう秋の気配だ。


九 旅の終わりは…
 ヒースローへの地下鉄も動き出したらしい。
 空港はかなり空いているようであった。やはり事故の影響があるのだろうか。しかし,各便とも特に運休などはなさそうだ。
 ところで,ここでちょっとした出来事。私の荷物がチェックインで引っかかってしまった。重量オーバーだという。今までそんなことはなかったから,「なんで」と言うと,「グループ旅行」ではグループ全体の重量の中で了解してもらえるのだそうだ。今回のように個人旅行だと難しいという。それでも4人の全体ということでなんとか通してもらえたが,これからは考えておかなければならないことだ。
 残りの買い物を楽しむ。つまり残ったポンドの始末である。
 ヒースロー発18時25分。機中泊。なかなか眠れません。

 ホンコン着13時20分(時差の関係でこうなっている)。
 ところで,ここでまたまた小さな事故発生。空港の荷物受け取りで荷物が出てこないのである。すべての荷物が回ったところで空港事務所に問い合わせると,荷物は香港で受け取りには出ないで翌日の成田便に積み込むようになっているとのこと。とりあえずホテルまで送るから,ということで解決。
 トランクはホテルに着き,私たちの部屋まで届けられた。「サンキュー」というのだが,届けてくれたボーイがなぜか去らない。「あっそうだ,香港はチップのいる国だ」,そう思ってあわてて小銭を探す。チップの考えのないわれわれには考えにくい習慣である。
 夜は町を散策。前回来たのは十年前。ずいぶん変わった,のかもしれないがたいへんな人ごみは変わらない。空港が変わって街が遠くなった。ごみごみした街と新しい街が同居している。物価は高くなった,と思う。
 夜4人で会食。しゃぶしゃぶ,ちょっと熱かったかな。妻のバッグも買った。昨日出遭った重量制限対策ということもある。

 帰国,成田空港でいろいろな手続きを済ませて,羽田行きのバスはどうかいなと思う。なんと時間ぎりぎり,ひょっとしたら間に合わないかも。バスの中では時計と睨めっこ。もし間に合わなかったら,東京に宿を取るか寝台夜行で帰るか,まで考える。しかし,道路事情は順調だったようだ。搭乗には十分な時間を残して羽田に到着した。よかった。
 旅の終わりはいつもあわただしくて,そして,ちょっぴり寂しくて。こんな旅はもうできないかもしれないねえ。でも,またするだろうねえ。

 この旅行記はこれで終わります。なお,まとめて「旅行記」に入れる予定です。また,まとめて一冊の記録としますので,希望がありましたらお申込み出下さい。代金は不用としますが,送料は申し受ける場合があります。