そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.38 /入院雑記6 立ちあがれ

 コルセットの型をとる。痛みがだいぶ少なくなったので,骨折部分の回復に支障のないように運動機能の練習をするための補助器具である。
型は立ってとる。手で支えて立つ。痛みはあるが,立てた。18日ぶりのことである。しかし,恐い。くらくらするようで,不安定で。立つということがこんなに恐いとは。人類は太古の昔,こんな風にして立ち上がってきたのだろうか。何のために。

 やがて,石膏の型が私の隣に置かれた。これが私の型。それを見ながらの連想。

  これはこれは始皇帝の兵馬傭
  殉死者の身代わりたちよ
  そうだ あの夏も暑かった  
  
  西安の辺りでは柘榴がたわわに実り
  道の端には露天が並び
  山盛りにして売られていた

  その土の中から
  武将や馬や兵士たち
  その数の夥しいこと
  あちらからもこちらからも
  次から次へと這い出してくる
  出てくる出てくる出てくる
  土に汚れて埃にまみれて
  
  さあ 立ち上がれ
  秦の人形地下軍団
  兵馬傭の兵士たち
  鎧着て 槍持って 刀引っさげて
  さあ 行進だ 遅れるな

  地上に向かって 
  黄砂舞う大陸の空に向かって

  
(2002.5.22)

* 記述内容と日付が一致しないことがあります。ご了解ください。