そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.400  桜の園に春を見た
 12月観察会は,千本桜公園であった。千本桜公園は,鳥取市布勢の東寄りにある。布勢は陸上競技場が2面,野球場が1面,体育館などがある鳥取県東部の運動施設のメッカといってもいい地域だ。公園はその東側の丘陵地帯にあった。ここには来たことがなかったので,早めに出発。予定より15分ほど早く到着した。
 観察は,道路横の草木から始まった。
「千代川原でも見たロゼットを見ましょう。その前に,ツツジが咲いているのでそれについて考えましょう。こんな時期はずれに咲いているのをなんと言いますか。」
「狂い咲き。」「返り咲き。」
「狂い咲きと返り咲きはどう違うのでしょう。」
 咲くべき時期に咲いてもう一度咲くのが返り咲き,咲くべき時期に咲かないで時期はずれに咲くのが狂い咲きということだそうだ。このツツジはどっちなのだろうか。何にしても今のところ暖かい冬が続いているから,春と間違えた花が咲いてしまったのだろう。
 足元にスミレが咲いているのを見つけた。
「ここにも春がありますよ。」
「木だけでなく草にも春が来ている。これはコタチツボスミレ。」
 ロゼット(写真)は植物の冬越しの仕方の一つである。葉をぴったりと地面につけるようにして放射状に広がっているので,雪が降り積もっても折れる心配がなく,他の地面が凍っても葉と地面とのわずかな隙間は温度を保つのに役立っている。そう言えば千代川原では実際に温度を測って調べた。
 タビラコ,オオアレチノギクなどのロゼットはどこでもよく見られる冬の野原である。
「千本桜」というくらいだから,たくさんの桜がある。清末先生はその桜の一本の幹の表面を指で示して,
「これは何でしょう。」
とたずねられる。よく見ると,木の皮に短い横に切れたような部分があり,それが木全体を取り巻いている。
「これは皮目(ひもく)といって,葉の気孔のような役目をしています。つまり,葉が落ちてしまった今の時期でも炭酸同化作用は必要ですから,この皮目がその出入り口の役目を果たしているのです。」
 雑木林の中の散歩道では木の葉の見分け方の実習。一人三枚ずつの枯葉を拾って仲間分けをしてみる。今日は12名の参加だったが,35・6枚の葉の仲間分けしてみると17種類にもなった。先生が1枚ずつ検証。コナラ,クヌギ,ナラガシワ,サクラ,サルトリイバラ,タカノツメの6種類だということであった。ああ,まだまだ勉強が足りないなあ。
 ウラジロがある。
「どうしてこれを正月飾りに使うのでしょう。」
「二つとも裏が白くなっているから共白髪。腹黒くないきれいな心で。新しい芽が準備できているところから新しい年によい芽が出ますように。そんな願いがこめられているのです。」
 眼下に運動施設や町並みの見えるところに出た。こんな位置から競技場を見たことはな
かった。どんより曇っていて寒い朝だったが,次第に晴れて気持ちのよい景色が広がる。自然を生かした公園の中で気持ちよく勉強できた2時間であった。