そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.408  文化の春

 博物館で「長谷川富三郎板画展」を見て、「写真展」(塩谷定好・植田正治・杵島隆)を見て、「前田寛治コーナー」を見て「鳥取の手仕事」を見る。ここには鳥取県内の伝統工芸が集められている。因州和紙、織物・染物、陶磁器、木製品、竹製品、鍛冶製品、郷土玩具、和太鼓、石灯籠。それぞれはそんなに多くはないが、これだけ集められると見るのもなかなか大変だ。
 最後に麒麟獅子舞(写真)を見る。最終日ということでなかなかの人出だ。麒麟獅子舞はかなり強引な呼びこみで入れられてしまったのだが、それでも50人ばかりの観衆があった。「10分ほどですから」と言っていたが、実際には15分以上ゆったりとした舞を見ていた。

 昼食のあとギャラリーあんどうで「放哉を書く・放哉を観る」を見る。これは尾崎放哉(1885〜1925鳥取生まれの自由律の俳人 放浪の生活の中で句作を続けた)の句を3人(網師本日海・蔵多龍子・住川英明)の書家が筆で表現し、また、写真(沖正)で表現する、というもの。なかなか面白い試みだ。
 一つの句をめぐって、人によってさまざまな感じ方があり、表現の仕方がある。「なるほどなあ」と感心するもの、「自分の感じ方とはちょっと違うんだけどなあ」と思うもの、さまざまだ。

 いろいろ見たので疲れて家路に着く。しかし、この日はもう一つ楽しみにしているものがあった。BSテレビで風景画家東山魁夷の2時間番組があるのだ。彼の作品は我が家にもある。もちろん本画ではない、リトグラフだ。何でも第3回日展で特選となり政府買い上げになった作品とか。2時間番組だから相当の数の作品が出てくるだろう、たぶんこの絵も出てくるだろうと思っていたら、しょっぱなから出てきた。

 東山魁夷は1908年横浜市に生まれた。しかし、彼の美術館は(東山魁夷館)は長野にある。そのため私は長野生まれかと思っていた。彼の風景画のふるさとともいえる長野を彼は最も愛していたらしい。だから、1999年に亡くなった彼の墓は長野にある。美術館の見える場所だそうだ。

 もう一つ、彼は何度もヨーロッパ旅行をしている。そして、いくつもの作品を残している。多くの日本のすばらしい風景画の作品の底には、日本のだけでなくヨーロッパの風景や町並みがあるのだ。それだけ彼の作品は底が深く幅が広いということだろう。
 ぜひ東山魁夷館や唐招提寺(彼の壁画がある)に行ってみたいものだ。