そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.417  ネコヤナギ

   日をゆりて水よろこべり猫柳  石原舟月
「そろそろネコヤナギのころになるからちょっと使うことがあるので。」
と妻が近所の家の枝をもらってきた。
たぶん何日か暖めておけば,あの綿のような毛に包まれたネコヤナギになるだろうと,何日か見ているが茶色の皮をかぶったままちっとも変わらない。
桜なら以前勤めた学校で経験済みだった。3月初めに花芽のついた枝を切り取って,1週間から10日暖かい部屋に置けば開花する。ネコヤナギも同じような季節のものだから,同じように推移すると思っていたのが間違いだった。

「ヤナギといえば並木や庭園木に用いられるシダレヤナギを連想しますが,ネコヤナギはシダレヤナギと違って,株立ちになります。雌雄異株ですが雄花のほうが豪華なので,切り花として雄花が主に栽培されています。カワヤナギが正式な名称ですが,ネコヤナギの通称が一般的に用いられています。(西良祐『花を贈る事典・366日』)」

 我が家にも小さいながらネコヤナギの株がある。この芽が結構膨らんで,花を見せている。雪の中に花を開いて,今朝は解けた雪がしずくとなって回りに光っている。なかなかきれいな朝の輝きを見せている。雌雄どちらか私にはよくわからないが,どうも先の文から考えると雄花のような気がする。ということは,もらってしっかり暖めているのは雌花なのか。

 私は鳥の写真も狙っているが,植物も狙っている。これは動かないから捉えやすいのだが,おいそれといい場面には出会わない。今朝の写真はネコヤナギに降ってくっついた雪が解けて,朝の光に光っているところで,偶然出会った場面である。というよりパソコンに映し出してその偶然に私自身が驚いたのだった。
 結局暖めていたものはあまり使い物にはならなかった。自然はいつでも人間の思い通りにはならない。しかし,ときには思いがけない姿を見せてくれることがある。

 今日は第1回の桜開花予想が出た。今年の開花は去年までのように早くないという。全く自然はどう動くのか……。