そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.421  出合いの森は雪の中

 3月の自然観察会は出合いの森で行うことになっていた。ここでの観察は、一昨年4月にも行っている。散策の後、採集した山菜をてんぷらにしたり、酢味噌和えにしたり、味噌汁にしたりして味わったという記録が残っている。
今回もそういう計画かな、と思っていたが、あいにくの雪になった。ひょっとするとこれは会場変更になるかもしれない。そんなときには文化センターで室内観察を行っているので、この天気ではそうなるかもしれない、と連絡待ちをしていたがそれもない。とにかく行ってみようと出かけた。

 とっとり出合いの森は鳥取市の郊外、気高町からは峠を越えてすぐ近くの桂見にある。鳥取県と鳥取市が出資して作っている施設だという。雪のせいか、今回の出席は10名ばかり。みんな「寒い、寒い」といいながら寄ってくる。
「みんなの森」の施設は、清末先生が中心になってつくられた施設ということで、詳しく説明を聞くことができた。

 里山、人間の身近なところにある山、昔は山といえばクリ、ナラ、クヌギ、カシなどを中心とした雑木林だった。
何も生えてないところにまず芽を出すのは、クローバーやススキである。日当たりを好む雑草が生え茂る。5・6年するとハゼやヌルデが芽を出し延びてくる。ヨモギやチガヤのような日陰でも育つ草も生えてくる。15年もたつと、シイ、カシ、ナラのような高木も大きくなってくる。
 人々は、15年から30年くらいで、下草を刈り木を切ることによって手入れをしてきた。しかもそれを薪にし、炭にして利用した。そこに育つ木は、切ってもまた芽を出してくる。根を深く深く延ばしているそれらの木は、倒れることもなく、大地をしっかりと護る。植林された杉林ではそうは行かない。それが森と人との共生であった。
そこまで聞いて、去年の台風によるあちらこちらの山のものすごい数の倒木を思い出した。そういえばあれは杉林だった。

 夏は日陰を、冬は日が当たるという環境もできる。そこにはセツブンソウやイチリンソウも育つ。昆虫も育ち、鳥も寄ってくる。タヌキもキツネもアナグマも棲みついてすばらしい自然環境ができる。
 そんな話を聞いて森の植物や動物の標本を見て回った。ほとんどの標本がこの出合いの森に生息していたもので、清末先生が作られたものだという。

 外に出ると雪はまだ降り続いていた。里山に生きる植物・動物・昆虫たちは、この思いがけない春の雪にどう過ごしているのだろうか。そんなことを考えながら峠に向かった。