そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.422  二人のための観光船ベトナム(ハノイ近郊)春紀行4

 ハロン湾めざして車は走る。自動車道というのではない。バイクも自転車も、歩行者も通行している。しかし、所々に料金所がある。運転手のキーさんはそのたびにチケットをもぎってもらっている。バイクや歩行者にはそれはなさそうだ。
「どれだけの料金を払うのですか。」
「1回100円くらい、ハロン湾まで8か所あります。」
「800円ですか。自動車道というのではないですが、日本の高速道と比べるとずいぶん安いですね。」

 途中市場に寄る。
 私たちは、市場にぜひ寄ってみたいとトンさんに言っていたが、トンさんは、
「鳥インフルエンザが発生しているのでいけません。」
といって取り合ってくれない。日本語で書いた「鳥インフルエンザが発生しているので、鶏の飼育されている施設には近づかないように」という印刷物まで示して近づけてくれなかった。それでも少しでも私たちの希望に近づけようと思ったのか、
「鳥のところには近づかないように。」
と、念を押して途中の市場に寄ってくれたのだった。急いで見て回るが、市場は生活用品が売られているのが普通なので、土産になるようなものはゆっくり見ないとわからない。大体の雰囲気を見ただけで終わった。鶏肉もあったが、見て見ぬふりをする。

 さて、ハロン湾。ハロン湾にはたくさんの観光船がひしめいていた。売店もあり、結構にぎやかい。トンさんは、
「ちょっと待っていてください。船の交渉をしてきます。」といってどこか行ってしまう。
「寒いなあ。売店に着るものでも売っていないかなあ。」
と目で探すが見当たらない。

 トンさんが帰ってきて、
「さあ乗りましょう。」
と案内してくれる。乗り込んでみると、20人以上は乗れる観光船。
「今日は清水さんだけの貸切です。」
「ええっ、この船貸切?」
 ほんとにほかの客はいない。これでやっていけるのかいな。何十隻もの観光船がいるが、そんなに多くの客が乗っている船もなさそうだ。とにかく二人のための観光船のハロン湾観光がスタートする。