ホアンキエム湖は、ハノイの中心に位置し、市民の憩いの場であり、湖自体が観光の場でもある。黎朝の始祖であるレロイが湖に棲む亀から授かった剣で明軍を駆逐したとの伝説が残っていて、湖の南には亀の塔が立っている。つまり、ここにもベトナムの戦争の歴史がある。しかし、そのあたりのことについては最終日に市内観光をすることになっているので、それに譲ることにする。
今日のところはホアンキエム湖の付近の旧市街の商店めぐりである。地図では正確なことがわからないので、足で確かめるしかない。多分この辺りがにぎやかな通りだろうと見ながら思いながら歩く。
店がずらっと並んでいる。同じ品物を扱っている商店が一角にかたまっている。かばんならかばん屋さん、靴なら靴屋さん、焼き物なら焼き物屋さんがずらりといった具合だ。
私はまったくといっていいほど買い物に興味がないけれど、妻は今回シルクを買って帰りたいという。藍染めにも凝っている彼女は、ベトナムのシルクには大いに興味があるらしい。とにかく値段が安いというのだ。
布を扱っている店の通りで、品定めが始まる。私はしばらく見ているが、いい加減に飽きて通りを眺める。狭い通りなのだが結構バイクの群れは行き来していて、やっぱり喧騒の町である。
ベトナムの風景に必ず出てくる笠をかぶって天秤棒で荷物を運ぶ女の人の姿は、普通に見られる。頭に荷物を載せている女性も見かける。天秤棒、よく見ると竹でできている。私が子どものころに使っていた天秤棒は確か木製だったはずだが。
トンさんに聞いてみると、20キロくらいの荷物は普通に運んでいるという。朝早いときの天秤は歩くリズムに合わせて調子をとるようにしなっいてるが、荷物が裁けて軽くなると天秤棒も担い手の気持ちも軽くなるのかプラプラと所在ない。
シルクの交渉も終わったようだ。
「すごく安い。でも、品物が少ない。ほかの店も探してみよう。」
なぜ値段が安いのか、品物が少ないのかわからないけれど、2・3軒の店を当たってみる。何点かの品物を手に入れて満足顔。本物のオールシルクなら儲けもんか。
しばらくいろんな店をのぞいて回って土産も少し買って、タクシーでホテルへ帰る。タクシー代1万6千ドン。数字を聞くとびっくりするが、120円ほど。安い。
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