そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.431  少数民族の村1 ベトナム(ハノイ近郊)春紀行12

 4日目(3月6日)は少数民族ムン族の村を訪ねる。この日も自由行動になっているので、ガイドのトンさんに案内のすべてを任せている。ベトナムの54の民族の中には、数十軒から数百軒という少数の家族の村がたくさんあるという。これから向かうムン族の住むホアビンは、ハノイから70kmあまり西にある。さすがにハノイ近辺の道路とは事情が違うので、2時間ばかりもかかる。
 途中の道べりに壷をたくさん並べて積み上げているいる家がたくさんある。
「あれは何ですか。」と聞くと、
「お酒です。おいしいですよ。」なんでも自然発酵させているのだそうだ。

 トンさんに言わせると、ガイドブックに出ている少数民族の紹介は少し間違いがあるらしい。これから向かう村はハノイに近いところにあるもので、普通の観光客はそこを見ることになる。ガイドブックにある「ムオン族」は中国やラオスとの国境付近に住む民族で、行くのに4日くらいもかけなければならない。トンさん自身も研究のために旅行で入った人のガイドを勤めることがあるが、とてもこんなものではないという。

 山に向かって狭くなった道を上って村の広場に着いた。10人くらいの女の子が出迎えてくれる。「おうさすが、たいへんな歓迎だ」と思ったら、
「ポウ(ポワかも)、ツーダラー(2ドル)。」と口々に叫んで、私たちに飾りのついた帽子のようなものを差し出す。「なんだよ、売り子かよ」。これまでにもいろいろな観光地で子どもたちの売り子に会ってきたので、ちょっとうんざり。この村の子どもたちが観光客相手に手作りのみやげ物を売りに来ているのだ。
 今日訪問する家に向かって歩き出すと、みんなついて来た。「ポウ、ツーダラー」の声を引き連れて歩く。

 中に、「マイ・ハウス」と言う少し大きな女の子がいたので、「この子の家に行くのかな」と思って、「ヨア・ハウス?」と尋ねると、「イエス」と答える。
でも違っていた。「ツーダラー」の子も、「マイ・ハウス」の子もある地点ですっと消えて、私たちは狭い道を高床式の家の敷地に向かっていた。

 角の大きな牛(水牛)が道路にのっそりと出てくる。多分役牛として飼われているのだろう。見渡すと不揃いな田圃は田植えが終わったところだ。傾斜地なので「千枚田」ほどではないが下の方にずっと続いている。