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高床式の入り口に臼が置いてあった。「あ、石臼だ」、年配の女性が迎えてくれた。そして、長い棒を石臼にはめるとごろごろと回し始めた。なるほど、こちらの石臼は立ったままで回すのか。自分が手本を示して「やってみなさい」という合図を私たちにする。私たちは代わり合って回してみる。臼の上の部分に入っている米が少しずつ粉になっていく。 階段を上って家の中に入っていく。板間に茣蓙が敷いてあってこのうちの家族が迎えてくれた。家族は夫婦と女の子が2人、それにさっき臼のところで迎えてくれたおばあさんの5人暮らし。 子どもは10歳と7歳という。学校はどうしているの、と尋ねると、ここから5キロほど離れたところにあって、毎日通っているという。しかも、午前も午後も勉強があるので、午前の勉強がすむといったん帰って昼食を家で食べて、また歩いて登校する。1日の通学距離は20キロにもなる。7歳の子がそれをやっているのだからたいしたもんだ。また、そのようにしつけがしてあるのか上の子は母親の言うことを聞いてよく働く。言われなくてもさっと動く。日本の子どもに見せてやりたいね。 この村の戸数は30軒ばかりで、米作りを中心に、家を建てたり屋根を葺いたりなどみんなで協力してやっている。結婚も村の中の人同士だという。お茶と酒をごちそうになった。来る途中道の横に並べてあった壷のものと同じ酒で、そんなにアルコールは強くないが結構いける。奥さんはなかなか飲める口らしく、飲んではしゃべっている。なんでも赤ちゃんを産んだ後、この酒を何日間か飲む習慣があるという。だから酒に強くなるわけだ。 トンさんがお父さんに煙草を土産に持ってきていた。それを二人が吸っている間におばあさんが話の中に入ってきた。何歳ですか、と尋ねると、手と指を使って「61歳」を示した。「若い」というと、「だめ、だめ、目も耳も悪くなった」とやはり身振りで表す。この辺りでは50を越えるともう年寄りで隠居だ、という。 |