そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.433  バッチャン焼き ベトナム(ハノイ近郊)春紀行14

 ハノイから車で南へ3・40分。ベトナム特産の陶器の中でもっとも有名なバッチャン焼きの里、バッチャン(Bat Trang)村である。郊外に出ると、道はでこぼこ大変に悪い。さすがのキーさん(私たちの車の運転手)も、ハロン湾にすっ飛んだようなスピードは出せない。しかし、程なくバッチャン村に到着。村に入ってすぐのところの焼き物店に案内された。

 まず3階の製作場所を見学。皿などに絵を描いている。バッチャン焼きは中国の影響を強く受けた硬質の白磁が特徴だということだ。その高い品質と安い価格に、世界中から買い手が集まるという。
ガイドブックによく出てくるトンボだとか花の絵柄も今描かれつつあるところだ。

 その値段といえば、日本でちょっと名のある焼き物だとコーヒーカップ一つでも千円単位だが、ここでは百円単位という安さ。ちょっと土産にいくつか買ったが、この手の買い物重く壊れやすいのが玉にきず。そうたくさんも買えない。かといって、「また来よう」とも言えないし。同じような値段で輸入して売ってくれれば良いのに。
 店の外に出ると、同じような焼き物の店がたくさん並んでいる。特に呼び込みをしているような場面はない。

 バッチャン村を後にしてハノイに帰る。道路の左右に広がる田んぼでは今田植えをしているところ。少数民族村では終わっていたが、ここら辺りはまだ田植えの真っ最中。ベトナムでも南部は年3回米をとるが、北部のこのハノイの辺りではでは2回とっているという。2・3月ごろに植えて、7月ごろ収穫、8・9月ごろに植えて1月ごろ収穫という具合だ。もうすぐこの辺りの田植えも終わる。

 収穫から田植えの時期は忙しいが、終わると仕事がなくなる。そうすると都会に出て出稼ぎをする。都会といってもそんなに勤める仕事があるわけではないので、行商をしたり、道端に収穫物の店を広げたりする。道端に店を出すのは自由らしい。「といってそんなに売れるわけでもないでしょうが」とトンさんは説明する。街の中だと人通りも多いのでそれなりの売れ行きもあろうが、車ばかりが通る郊外にも店を広げている。
 ベトナムの人たちは働き者なのだ。

「ちょっと写真を撮りたいので停めて止めてください。」
 田植えの模様をカメラに収めようと頼んで車を停めてもらった。
もちろん田植えは手植え。日本では、わずかに学校で体験学習をするのに残っているだけだが、苗とり、苗運び、植え付けすべて手作業。ハノイ付近はかなり広い平野が広がっているから、これはなかなかたいへんだろう。鋤いたりならしたりには牛を使うだろうが、機械はほとんど使っていないようだ。水を当てるのも二人がかりで汲み上げたり、足でこいで上げたりしている。