そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.435  水上人形劇 ベトナム(ハノイ近郊)春紀行16

 昼の観光の終わりにみやげ物店に寄った。実はここはホテルの近くの池のそばにあって、私たちは前から見ていたところだった。しかし、どんなところかなくらいの感じで見過ごしていたのだった。私たちが入ると日本語でいろいろとみやげ物の説明をする。
 私がこちらの酒(米の醸造酒でウオッカみたいな強い酒)を買おうとカウンターに持って行って、「日本語が上手ですね。」というと、「日本語の勉強をしているのです。」と言う。ハノイの大学の学生で、実地の勉強をしているのだそうだ。何かベトナムは日本語ブームと言う感じだ。一昨日寄ったすし屋でも土産物屋でも博物館でも日本語の勉強をしていた。
「日本に来て勉強をしなさいよ。」と、話しかけると、
「おじさんが教えてくれますか。」と言うから、
「ああ、もちろん。」なんておしゃべりも弾む。

 ハノイ最後の観光は水上人形劇。最終日なので、「カメラもトランクに入れました」と言うと、トンさんは、
「それはないでしょう。この人形劇を写さなきゃあ。」と言う。あわててトランクを開けてカメラを取り出し、劇場に入って構える。
 ホアンキエム湖の一角に設けられた水の劇場で演じられる人形劇。どんな仕掛けで行われているか、細かいことはわからないが、見ていて大体の筋はわかる。短いプロットの民族劇は数十年を隔てて復活したものだと言う。二百人ばかりの観光客の拍手も大きい。

 時間になったので急いで劇場を出る。飛行場へ。
出国手続きはトンさんがすべてやってくれる。さすが、空港でも顔が利くのか日航の窓口も難なくパスした。
私が「ありがとうございました」と握手して名刺を渡すと、「メールを送ります」とトンさんは返事をしたが、いまだメールは来ない。

 すべて順調だった予定が狂ったのは関空に着いてからだった。
「渋滞していますので、鳥取行きの便には間に合いません。」おお、どうすればいいのか。とにかくオーキャットまで行って交渉しよう。
 大阪の通勤時間の渋滞は当たり前のことらしい。だったらそのことを前もって知らせてくれなきゃいけないと思うよ。不親切だよ。
 結局、大阪・鳥取便を予約より1本遅らせてもらって帰着できたのだが、旅の終わりはちょっと不満かな。

 でも、ベトナムの旅はとてもよかった。また行こう。(終わり)