そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.437  サンショウウオ

  4月最初の部落行事に溝・川掃除がある。午前中かけて溝ざらえをし、勝見を流れる勝見川と大沢川という2つの川をきれいにする。5年ほど前までは2日に分けてやっていたのだが、側溝などかなり整備されて、そんなに時間もかからないから1日でやってしまおうということになった。草がよく生えている年などはかなり時間がかかるが、今年のように3月までも大雪があった年は楽だ。今年は班長をしているので、私が出なければなるまい。

 溝掃除がすんで少し休憩をした後川掃除にかかる。川底にたまった石や砂を上にあげる作業をしていると、
「これはイモリでしょうかい。」
と、近くで仕事をしていた浜田さんが尋ねる。
 10センチばかりの、確かにイモリのような奴が草の陰にじっとしている。もぐりこんでいたところを上の土をとられて丸見えになってしまったらしい。私が手にとって腹を見ると、赤くない。

「イモリだったら腹が赤いはずですから、これは違いますよ。」
「子どものイモリは赤くないかもしれん。」
 近くにいる人も集まって「なんだろうか」と不思議がっている。
「これはサンショウウオかもしれません。」
「こんなに小さい。これはサンショウウオの子どもですか。」
「ああ、サンショウウオといってもみんなオオサンショウウオではありません。小型のものもあります。」

 私は以前鹿野町内の学校に勤めていたころのことを思い出していた。保護者が、近くにいたからと持ってきたのをしばらく飼育したことがあった。その時のものは確かカスミサンショウウオだった。
「調べてみます」といって家に持って帰った。
 図鑑で見てもはっきりしないので、水槽に少し水を入れて植木鉢のかけらで上がる所と隠れ場所を作ってやった。それから清末先生に電話をするが留守らしい。ファックスで写真を送っておいたら翌日、電話があった。
「真っ黒でよくわからないが、カスミサンショウウオだと思います。」
 ファックスだと色が出ないから、真っ黒になってしまったに違いない。

 念のため、もう一度写真を撮り直して元の場所に逃がしてやる。ごそごそと木の葉の間に入って見えなくなった。ちょうど自然観察会で清末先生に会えるから、写真を見てもらえばいい。会って早速見てもらうと、
「ああ間違いありません。この尻尾の方の橙色になっているのが特徴です。」
 だんだん少なくなってきている種で、まだ絶滅までは行かないが心配されているということだった。勝見の川もきれいになったのかな。それならいいのだが。