そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.442  ムサシアブミ

 春の花がいっぱいだ。プリムラ(セイヨウサクラソウ)はちょっと盛りを過ぎたけれど、玄関の外の20ばかりの鉢に咲いているピンクと白の花は、もう少し持ちそうだ。5月になったら種を採って6月ごろには種を蒔く。学校では卒業式や入学式に使っていた。今はそんな目的もないけれど、家の周りの花として育てている。
 パンジーもビオラもよく咲いている。これも今年は採種からやってみようと思っている。
ニホンサクラソウも今年はたくさん葉を出して、つぼみがどんどん出てきている。今年は10鉢だけだが、株を分けて増やしてみようと思う。

 前庭の樹木の陰においていた鉢から、ロケットのような三角形の太い芽が突き出してきた。名札を見ると「ムサシアオイ」と書いてある。なんだこれは、と妻を呼んで見せると、「ああ、これはもらったものだ」という。そういえば2年ばかり前に近所の人にもらったものだ。鉢植えして外の棚に置いていたら、去年の大風で落っこちて鉢が壊れてしまったので、そのまま木陰に置いたまま忘れていたのだ。環境がちょうどよかったのか、立派に芽を出したというわけだ。

 しかし、「ムサシアオイ」とは、どんな植物なのだろう。事典などで調べるが出ていない。しばらく調べていると、「ムサシアブミ(武蔵鐙)」に行き当たった。どうも聞き違いか何かで名札の名前が間違ってしまったらしい。

 ムサシアブミ サトイモ科の多年草。関東以西四国、九州の海岸付近の林中に生える。高さ30〜60センチメートル。地下の球茎から2枚のやや厚質の葉を出す。葉は三出複葉。各小葉は広楕円形で長さ20〜30センチメートル。5月、暗紫色であぶみ形の仏焔苞に包まれて先端が円頭の肉花穂を付ける。(小学館『日本国語大辞典』)

 武蔵国からつくり出された鐙を「武蔵鐙」というと同辞典には記述してあるから、肉花穂の上部の形が似ているところから付けられた名前らしい。
 4・5日して見ると、葉が伸び、説明してあるところの「暗紫色であぶみ形の仏焔苞に包まれて先端が円頭の肉花穂」が見えるようになった。玄関においてやる。そんなに珍しいものではないかもしれないけれど、我が家としてはちょっと変わったものだから大事に育てよう。