そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.452  予定が狂った果実

「うちの畑にも食べられるものを植えよう。」
何年か前から妻が言う。そういえば我が家で食べられる実がなるのは梅の木くらいのもので、これもその場で「がぶり」と言うようなことにはならない。
そこで少しずつ植えることにした。

 まずイチヂク。通信販売のものを植えたのだがなかなか実がつかない。妻の里のほうからも何年か経っている木をもらって植えたが、これもなかなか。虫がつきやすいのか、芯がやられることがあるらしい。それでも去年くらいから少しずつ実がなりだした。
『俳句歳時記』では秋の季語になっているが、夏に熟するものもあると書いてあるので通販のものはそれらしい。春になると葉よりも先に小さな実がつついて次第に大きくなっていく。イチヂクは漢字では「無花果」と書くのだが、実際には果実と見えるものは小花の集まったもので、それが次第に熟していくのである。「多花果」といったほうがいいのかもしれない。
 今その木だけで20個以上実がついているから、もう1本の木も合わせて今年は十分期待できる。

 次にユズ。これもなかなか実がつかなかった。
「うちの土地は果物の木に向いてないんじゃないか。」
などと言っていたら、ようやく去年実をつけた。それもたった二つ。しかし初めての実を二人は「うまい、うまい」と言って食べた。
 今年は花をたくさんつけた。これまでの不評判を挽回しようとしているらしい。

 キウイの花が咲いた。苗を買うからと棚を作って植えたのが3年前のことである。蔓は2メートルばかりの柱を上り、だいぶ棚を覆い始めた。しかし、実がなるまでにはならなかった。やっと花が咲いたのが去年のこと。それも雄花が数輪だけで、雌花は咲かなかった。確かによく見れば雄木のほうが元気に見えるが、雌木も決してそんなに劣っているようには見えない。まあ、雄蕊先熟ということもあるからなあ、と自然観察で学習していたことを思いながら今年になった。
 たくさんの花が見える(写真)は雄木だけ。雌花はいくら探しても一つしか見られない。今年は一つのキウイを二人で分けて食べるのだろうか。

 柿の木も植えているが、まだ花を見ない。苗木を買ったときに聞いたら、店の人は、
「2・3年もすればなるでしょう。」
と言っていたが、もうその3年はすんだ。
果物も予定通りには行かない。食べるまでにはなかなかの辛抱が必要だ。