そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.465  安野光雅展

 倉吉博物館で毎年この時期に展覧会がある。去年は『童謡・唱歌100選展』と称して原田泰治展、一昨年は『山下清展』がこの会場であった。
今回は、安野光雅である。彼の作品については、絵本『ふしぎなえ』が有名で、私も好きな絵本作家の一人である。『〜空想をはぐくむ〜安野光雅展』というタイトルで、101点の作品を見ることができた。

入口でもらった紹介のチラシは次の通り。
「安野さんは、1926(大正15)年島根県津和野町の生まれ。美術教員として上京後、教員のかたわら本の装丁などを手がけながら1968(昭和43)年、絵本『ふしぎなえ』で絵本会にデビューされました。淡い色調の水彩画を中心にやさしい雰囲気の漂う作品を多く発表されています。また、美術の世界だけにとどまらず、科学・数学・文学などに造詣が深く、その好奇心と想像力の豊かさで次々と独創性に富んだ作品を発表。その業績に対して、国際アンデルセン賞を始めとする数々の賞が贈られています。本展では、安野作品の魅力を余すところなく紹介すべく、風景画や絵本に至るまで、101点の作品を展示いたします。豊かな自然に囲まれ、叙情豊かな町並の残る『遥かな町・倉吉』で安野画伯の世界を存分にお楽しみください。」

 第一展示室の「日本の原風景」。水彩画16点、九州、中国地方、奈良などを暖かい水彩で描いている。2000年初めごろの作品というから,この展覧会では安野作品の中では新しい方になる。展覧会の絵は、画家の描いた作品の順番に並んでいるとは限らないから、そのあたりは知っておく必要がある。
「さよなら さんかく」。これは面白い。上下対象の絵、文になっている。1981年の作品であるから,今回のものでは初期の作品である。上から見るか、下から見るか一つのことを追いかけながら、また元に返ってくる不思議さがここにはある。

 第2展示室は「街道をゆく」「空想の絵本」。ここで彼が司馬遼太郎の『街道をゆく』の挿絵を描いていたことを私は初めて知った。この本は私も全部持っているのだが、気がつかなかった。後でよく見てみよう。
「空想の絵本」。これは『ふしぎなえ』の延長上にある世界だろう。

 第3展示室は「旅の絵本Y」「昔の子どもたち」。「旅の絵本Y」では旅人がヨーロッパを旅する。旅人を探し、そこに隠された童話を考える。
「昔の子どもたち」。安野さんの思い出なのだろうか。そのまま絵本である。
 第4展示室は「もりのえほん」。隠されている動物探し。

 安野さんの世界にあっという間に引き込まれてしまった。津和野に彼の記念館があるということだから,機会があれば行ってみよう。