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5月の晴天が続いたある日,一人のおばあさんがやってきた。「今年もワカメを持ってきましたで。買あてつかんせえ。」毎年やってくる夏泊の商人(あきんど)さんである。今年とれたワカメの行商である。 夏泊は,日本海に突き出した岬「長尾鼻」の西にある漁村である。水田は皆無,畑地にも恵まれないこの地の人々はもっぱら漁業で暮らしを立てている。中でも海女漁が有名である。 20年も前にこの近くの学校に勤めていたことがあった。海に恵まれたこの地区の子どもたちは,海が生活の場である。従って泳ぎはうまい。しかし,中には苦手な子どももあった。そんな子どもに向って言ったものだった。 海女漁は主に春から夏にかけて行われる。海女たちがとるのは海草,貝類であり,そのうちワカメとりは4月の中旬頃から始まる。 こうして海女たちがとったワカメを商人さんが買い,町や農山村の人たちに売り歩く。また,商人さんは夏泊の人たちの注文にも応じて日用雑貨品を買ってくる,という役割も果たしている。 【写真は長尾鼻より日本海を望む】 (2002.6.12) |