そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.472  黒曜石に魅せられて(自然観察夏の旅2)

 隠岐は大きく島前(どうぜん)と島後(どうご)に分かれる。今回の観察は島後だけに絞って計画されていた。3日間といっても両方を見ることはとてもできないという。
 島後。「隠岐の北東端にある郡島中最大の島であり,ほぼ円形に近い火山島である。大満寺山を最高峰とした山々は杉林が美しく,周囲の海岸全域が国立公園に指定されている。平成16年10月1日に島後の西郷町,布施村,五箇村,都万村の4か町村が合併し,約1万8千人の人口を有する『隠岐の島町』が誕生した」(「隠岐・総合観光案内」より)

 まず旧五箇村(このたびの町村合併により島後は4町村併せて「隠岐の島町」になった)で黒曜石の研磨について見学する。今回の隠岐の島観察の会でガイドを受け持ってくださる八幡さんのお父さんが開かれた黒曜石の研磨作業所である。私たちも実際に研磨をしてみることになった。

 黒曜石は,自然に割れた状態でも表面は黒くきらきらと輝いていて,ガラスのように鋭く,縄文時代の人たちはそれを刃物として利用した。隠岐の島はその黒曜石の有数の産地と言う。日本海に面する多くの地方は,出土する黒曜石石器の多くがこの地のものだそうだ。現在は鏃や刃物として使うことはないが,装飾品となっている。
 ということは,自然に割れた状態では使えないので,用途に応じて裁断し,研磨する必要がある。その工程を実習することになった。案内役の八幡浩二さんが,手本を示してくださった。

 裁断から磨き上げるまで,大きく4工程。ひとかけらずつの黒曜石をもらってみんなが挑戦する。裁断した面はつやがない。それを磨き上げていくわけだ。まっすぐに裁断したつもりでも平らでなかったり,全体磨き上げたつもりでもつやが出ない部分があったりと,なかなか難しい。
「皆さんが使ったのはマカレナイト黒曜石と言って,世界一質のよい黒曜石です。」
 世界一の黒曜石も,世界一の職人によって本当の世界一の輝きを見せるのだろう。われわれのような観光半分の気分じゃあ,色もつやも出ない。

 そのあと,実際に黒曜石の出るところを見学した。途中,ツノゴケやハマゼリ,ハマボッス,ベンケイガ二などの動植物の観察もする。崖を見ながら説明を聞く。
「これは黒曜石です。成分は同じなのですがゆっくり冷えたため塊になりません。」
 実は,隠岐の島が火山活動によって生まれた島だということを私は知らなかった。今日はこのあと油井湿原の観察である。  (続く)