そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.473  油井湿原(自然観察夏の旅3)

 観察会が作成した旅行計画のパンフレットには「由井湿原観察」となっているが,島後の地図を見ても「由井」という地名がない。「油井」という地名があるので,ひょっとしたらそれの間違いだろうか。
 しかし,最近になって見学しやすいように整備されだした湿原というから,まだ地図にも載っていないところなのかもしれない。

「10年前にはこんなに整備されていませんでした。」
 清末先生もそうおっしゃった。噴火口の跡ではないかともいう。展望台が2箇所作られ,遊歩道の板道が全部ではないがめぐらされている。湿原といっても水に入るとずぶずぶと沈みこむらしい。
1・2日目案内の八幡さんも,
「毎年掃除などを行うのですが,中にはまってしまうと助けるのも大変なんですよ。」
と話す。黄色いイトトンボがたくさんいる。八幡さんに尋ねると,
「キイトトンボ(黄糸蜻蛉)です。」との答え,まことに分かりやすい。トンボでは他に,アオヤンマ,シオカラトンボなどを観察できた。

 植物では,来る途中,モクロジ科(ムキロジ科)のモクゲンジ,オキノアブラギク,クワの仲間のカジというのもあった。昔の人はこれの葉に歌を書いたというのだ。この木で船の舵を作ったところからカジという説もあるとか。
 オキノアザミも咲いている。このアザミは葉の切れ込みが深く尖った感じである。
 ミソハギ,ミクリ,セリなどを見て,最初の展望台の対岸の展望台に到着。
「イヌタヌキモがあります。食虫植物です。」
と,清末先生。水の中から引き上げてみると,袋のようなものがいっぱいついていた。これが捕虫嚢で,水中の小動物を捕えて消化するのだそうだ。
 そこから山裾の遊歩道に上がり,バスまで帰る。途中キイトトンボが虫を捕えて食べているところを観察。あんな華奢にも見えるイトトンボが,じっととまって食事の真っ最中である。生き物の世界は厳しい。

 一日目の観察を終えてホテル羽衣荘着。来る途中のバスの中で,松田さんが「部屋割りはできていますが,部屋の名前が説明しにくいので,メモを回しますから自分で確かめてください」といっていたのを思い出した。
「波走(なばしり)」「塩戸(しゃあど)」「音部(おんべ)」という読み方である。私の部屋は塩戸だったので,フロントで「3番サアド鍵をお願いします」と言ったら,笑われてしまった。