そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.476  忘れしゃんすな西郷の港(自然観察夏の旅6)

 隠岐の旅3日目を迎えた。今日も日程がしっかり詰まっている。午前中は,海中景観研究所を訪ねて,海に入って海草などの観察。昼食のあと遊覧船で海から隠岐の島の奇岩を観察。それから西郷港に移動して高速艇で帰路に着く。

 津戸湾でバスを降りて湾の中を観察する。藻の中に魚がいる。蟹もいる。クロキヅタの群生も見える。
「クロキヅタは,イワヅタ科の海藻です。波が静かな入り江の水深10m前後の海底や水面付近の防波堤の壁面に生育します。クロキヅタは,1910年に後醍醐天皇の行在所跡とされる黒木御所跡前の別府港(西ノ島)で発見され,それにちなんで名付けられました。クロキヅタは,世界でも中東でしか確認されていなかったため1922年には,国の天然記念物に指定されました。(隠岐クロキヅタ保全倶楽部パンフレットより)」

 海中景観研究所に移動して,海に入って海藻を採集。何年ぶりの海水浴だろう。底は礫になっていてなんとなく足元が不安定だが,海水はもう冷たくはなく気持ちがよい。水中眼鏡を準備してくればよかった。海水はきれいだが,水中で目を開けてもあまり見えない。それでも何種類かの海藻を採集してポケットに詰め込んだ。
 研究所で所員に説明を聞き,海藻の名前を確かめる。私が採ったのは,イシモズク,ソゾ,イバラノリ,アミジグサ,ウミウチワ,ミル,マメクワラの7種類だった。

 中村港で遊覧船に乗り,よろい岩,かぶと岩,象ヶ鼻(写真),浄土ヶ浦海岸などを見てまわる。大きなうねりはないが,時折波が船の窓を打ちつける。
 アゴ漁の船が見える。鳥取辺りでもやっている漁法だ。かもめが飛んでいる。1時間ばかり,海から見る景色を楽しんだ。
 西郷で,フェリーの時間待ちの間に土産を買う。1日目,2日目に飲んだ地の焼酎がうまかったからそれにしよう。ちょっと重いけれど,船と車の時間がほとんどだから大丈夫。あとは海藻の佃煮,鉢物も1つ買ったら荷物の数が増えた。
 
 2泊3日の旅が終わった。離島には本土(隠岐の人たちはそう呼ぶ)とはちがったそれなりの厳しさがあろう。しかし,山あり海あり,小さな島だが,隠岐は変化に富んだすばらしい自然を見せてくれた。
 2日目の登山の疲れが残るかと思っていたが,不思議なくらいに元気。変化と内容のある観察がよかったのか。あるいは履物がよかったのか。大きな収穫を土産に西郷の港をあとにした。               (このシリーズ終わり)