そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.478  朝顔と夕顔

 2・3年前から日よけにアサガオを植えている。市販のアサガオで,苗を買って棚につかまらせた。2年目からは,こぼれ種が芽を出すのを育てる。
〜〜あさがお 学名はファルビチス属ニル種。属名のファルビチスはギリシア語のフィル(色の意味)に由来,種名のニルはアラビア語で「藍色」という意味をもっているといわれています。『花を贈る事典』(西良祐著)より〜〜

 秋の七草に「朝顔の花」が詠まれている(山上憶良)ので,そのころから人々に愛されていた花かと思いきやさにあらず,万葉時代のアサガオは,薬草として植えられていたもののようで,秋の花の代表というほどではなかった。
 では万葉集に出てくる朝顔は何か。ムクゲ説とキキョウ説とかあったという。しかし,秋の野辺に咲く花としてはキキョウのほうが自然だということで,キキョウだったのではないかというのが現在では一般的になっている。

 同じようなアサガオを毎年見ていても飽きがくる。ちょっと変わったのも植えてみようと,別の店をのぞいてみる。何か珍しいのはないだろうか。
 琉球アサガオ・クリスタルブルーというのがある。7月末になってやっと花が咲いた(写真)が,名前の通り青い花で,朝から夕方まで咲いている。しかも,濃い青からだんだん色が変わって,最後はピンクになってしぼむ。

 ユウガオも植えてみた。「Moon Flower 夕顔(ヨルガオ) ヒルガオ科」と書いてある。「えっ,ユウガオってヒルガオ科だったの」と思って調べてみる。
〜〜ゆうがお ウリ科のつる性一年草。アフリカ,アジアの熱帯地方の原産で,日本では古くから栽培されている。『日本国語大辞典』(小学館)より〜〜
 はっきり「ウリ科」と出てくる。
「じゃあ買ったユウガオはユウガオではないのか」。アサガオとヒルガオとユウガオがこんがらがって分からなくなってしまった。
 植物学的な分類というよりも,花の咲く時期,花のつき方や形で,アサガオもヒルガオもユウガオも同じような仲間として見られたものなのだろう。
 
 また,いずれも文学の世界に登場してくる。アサガオは先ほど上げた万葉時代からのつきあいだし,ユウガオは源氏物語第四帖の「夕顔」が有名だ。ヒルガオは,この二つほどではないが外国文学にあったと思うが,忘れてしまった。ハマヒルガオは「ハマヒルガオの小さな海」でよく知られている。