そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.487  蚊取り線香

 朝の涼しいうちに,庭や畑や家の回りの草取りをする。この仕事は1回したらおしまいというものではない。取っても取っても生えてくるきりのない仕事だ。春の草取りはまだいい。草がまだ十分生長していないから取りやすい。それが夏になると茎も葉もがっしりして,根もしっかり張っているのでたいへんだ。

もう一つの悩みは蚊にやられるということだ。
「なんか今年は蚊が多いなあ。蝿は少なくなったみたいだけど」
「消毒しなくなったからじゃない。蝿がいなくなったのは下水道ができたからだと思うし。」
 確かにそうかもしれない。町内会で消毒薬を購入して,夏の日曜日にはそれを班ごとに配布し,当番を決めて側溝などの不潔になりがちな場所に撒いていた。しかし,消毒による効果よりも薬害のほうが問題になり,町内会としての取り組みをやめて2年になる。その前には蚊がいなかったということはなかろうが,関係はあるかもしれない。
 蝿については,以前勤めていた学校で,「今年は蝿が少なくなった」ということがあった。調べてみると,堆肥工場ができたために堆肥が野積みにされることがなくなった,という事実があった。下水道が町中ほぼ完備して,蝿の発生源となる場所が少なくなったということは確かだろう。

 さて,蚊対策である。どうも一番効果があるのは蚊取り線香のような気がする。蚊取り線香の原料は除虫菊だという。除虫菊はペルシア及びダルマティア地方原産の多年生植物だが,わが国では1885年ごろに輸入,栽培が始められた。蚊取り線香が作られたのは1887年といわれるが初めは棒状のものであった。長時間安定して煙を出し続ける現在の渦巻状の蚊取り線香は,その後考案されることになる。
 作業中に使うには,携帯用の器具(写真)を使うとよい。蚊取り線香が煙を出し続けている間は,蚊に刺されることは非常に少ない。
 虫除けスプレーも各種出ていて,確かに効果はあるが短時間しか持たないし,スプレーの殺虫剤はそのときだけの効果しかない。

 先日,砂丘植物ハマゴーの話を清末先生としていて,
「以前はハマゴーの煙をカクスメ(「蚊燻べ」の転か)といって蚊よけに使っていましたね。」
と私が言うと,
「そうそう,ハマゴーの茎も箪笥の虫除けにしていたし,葉を便所の虫退治にも使っていた。」
と話される。昔の人は,身の回りのものをうまく生活に利用していたのだ。そうそう,かやなんて今でも使っているところがあるのだろうか。そのうち,「昔の生活」として何かの本に載るようになるのかもしれない。