そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.492  夏から秋へ(虫編)

 あれほど家のまわりを飛び回り,やかましく鳴きたてていたアブラゼミも,もう飛ぶ姿を見ることがなくなった。今朝も玄関の外に仰向けに転がっているのを一匹見つけた。
ツクツクボーシが夏を惜しんでいる。
 代わって野原などにいる秋の虫が飛び回り,鳴き声をあげている。

〜〜あれ 松虫が鳴いている ちんちろちんちろ ちんちろりん
   あれ 鈴虫も鳴き出した りんりんりんりんりいんりん
   秋の夜長を 鳴き通す ああ おもしろい虫の声

   きりきりきりきり こおろぎや がちゃがちゃがちゃがちゃ くつわ虫
   あとから馬おいおいついて ちょんちょんちょんちょん すいっちょん
   秋の夜長を 鳴き通す ああ おもしろい虫の声
         (「虫の声」作詞・作曲者不詳)〜〜

 成美堂出版の『童謡・唱歌200』によると,『尋常小学読本唱歌』明治43年7月初出らしい。昭和7年4月『新訂尋常小学唱歌』で,第2節の「きりぎりす」から「こおろぎ」になったという。昭和17年『初等科音楽』で削除,戦後復活,とある。
 なぜ「きりぎりす」から「こおろぎ」になったのだろうか。なぜ戦時中の教科書から削除されたのだろうか。

 自然観察の会で佐治を訪れた。トンボが飛んでいる。群れを成して飛んでいるのではない。いわゆる「赤トンボ」。
〜〜夕やけ小やけの赤とんぼ 負われて見たのは いつの  日か
   山の畑の桑の実を 小籠に摘んだは まぼろしか
   十五で姐やは嫁に行き お里のたよりも 絶えはてた
   夕やけ小やけの赤とんぼ とまっているよ 竿の先
          (「赤とんぼ」作詞:三木露風 作曲:山田耕筰)
 シオカラトンボも飛んでいる。ムギワラトンボも飛んでいる。
「トンボは横から撮らないと何トンボか分かりません。」
と,清末先生は言われるが,トンボの方は待ってくれない。カメラを向けるとスイッと逃げてしまった。

 そして,夜になると虫の大合唱である。