そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.493  五しの里での観察会

 9月の自然観察会は佐治で行われた。佐治は去年までは八頭郡佐治村だった所。合併により鳥取市佐治町となっている。
3年前の国民文化祭では,佐治村は「五しの里フェスティバル」と名づけてふるさと祭りを行った。「五し」とは,
……さじアストロパークの天文台を有していて,美しい星の見られる村である
……県内で昔からの和紙の産地は青谷町と佐治村だけである
……多くの農家が川沿いの傾斜地を利用して二十世紀梨の栽培をしている
……佐治川沿いに産する鑑賞石は古くから「佐治石」として知られている
はな…佐治谷話
というのだ。(「空の山から」No.97より・このとき私は佐治谷話をききに来た)

 今回の観察会は,尾際の山王滝だという。地図であまり確かめもせず集合場所の「流し雛の館」からさらに車で30分も上ったところ,岡山県との県境に近いところだった。
 駐車場すぐ近くを流れる佐治川の川原で佐治石の観察。
〜佐治川石 八頭郡佐治村などの佐治川沿いに産する鑑賞石。佐治村加瀬木,森坪の付近,用瀬町江波付近の塩基性火山岩源変成岩が,転石となって佐治側,安蔵川,千代川を流れるうちに摩滅浸食されて鑑賞石となる。(『鳥取県大百科事典』)

 ツリフネソウの花のつくりを観察する。ツリフネソウの名前は,花の咲いている様子がちょうど帆をかけた釣り船のように見えるところからついた名前だという。調べてみると,なんとインパチェンスも同じツリフネソウ属だということだ。だからツリフネソウの学名は,Impatiens textori(インパチェンス・テキストリ)。ツリフネソウの仲間はあまり日差しの強くない谷間の湿地や水の流れているところに自生する。

 セスジツユムシが葉っぱにとまっている。体長3pほどの小さなキリギリスの仲間だ。背中に1本の筋があるのが特徴だという。
昆虫ではほかにミヤマアカネ,シオカラトンボ,ムギワラトンボ,フキバッタ,ミヤマカラスアゲハも観察する。ミヤマカラスアゲハは,地面にとまって水分の補給をしているところだ。オオツマグロヨコバイも観察できた。オオツマグロヨコバイはイネの害虫だそうだ。

 イタドリの種子の観察をする。花びらに囲まれて,黒い種子が透けるように見える。花びらが3枚なので,種子も3角形になっている。
キンミズヒキの種子も観察した。
「何に見えますか。子どもたちに尋ねると,ピエロの帽子だ,と答えます。なるほどそういえばそうですね。

 小さなトンネルを抜けて渓流に出た。山王滝の上流に当たるらしい。空が曇っているので暗い感じがする。ちょっと危なっかしい橋を渡って引き返す。
 元の道に出たところで大粒の雨が降り出した。しまった,雨具を車においてきてしまった。今日は午前中から空模様が怪しかったから,十分な用意をしていたのに,最後になってからずぶぬれになってしまった。