そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.501  ハナグモ

 彼岸に妻の実家の墓参りをする。車に乗せていた花にクモを見つけた。さわろうとすると糸を出して下に下りて,逃げようとする。
「だめだよ,車の中だから。」
と,花に返してやる。花は墓の花立にさして帰ったが,クモがそこまでついて来たかどうかは知らない。

 玄関に飾ったコスモスにまたあのクモがいる。黄緑色をしている。何というクモだろうと調べてみる気になった。「学習カラー百科」(学研)で見ると,大きさとか体の色から見て,「ハナグモ」らしい。この事典は「体長 めす6mm おす3mm」だけしか書いてない。平凡社の世界大百科事典(1968年版)には「ハナグモ」は出ていない。
 意外なことに日本国語大辞典(小学館)にかなり詳しく出ていた。

〜〜蛛形類カニグモ科のクモ。体長3〜6ミリメートルの黄緑色の美しいクモで,腹の背面に暗褐色の斑紋があり,第1脚と第2脚が長く横に伸びる。網は張らず,草木の上でゆっくり歩いて獲物を捜したり,また,よく花びらの陰にひそんで獲物を待っていたりする。各地に分布。〜〜
 写真は花にとまっているところがとらえられなくて,床に下りたところを写したもの。画面が暗いのは床の色のせいである。

 そうか,このクモは網を張らないのか。工藤直子の「うちをつくろう」という詩は,クモが網を張る場面を捉えたものなのに。
〜〜しずむゆうひに てらされて
  ぼくは くうちゅうぶらんこだ
  あっちへ ひらり
  こっちへ ふわり
  えだから えだへ いとのはし
  ぶらりさがって とびまわる〜〜以下略  「のはらうた1」(童話屋)より 
 
 網を張るクモはなんとなく手の内を見せて(いや,見えないからかかるのか),獲物がやってくるのを待つ。
 華奢できれいに見えるハナグモだが,網を張らず花に潜んで獲物をじっと待っている。なかなか狡猾なところもあるのだな。
 待てよ。人間だって……………。