そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.507  観音山

 例年行っている村仕事に「観音山(かんのんやま)清掃」がある。観音山というのは気高町勝見の長泉寺の裏の山で,勝山(かつやま)が正しい名前らしい。標高70.3mの頂上に観音像が祀られているので観音山と言われるようになったようだ。

 その昔ここには勝山城という城があった。城主は首藤豊後守(すどうぶんごのかみ)といい代々国侍として居城していた。ところが尼子氏が因幡の国を攻め,この城山も尼子正久のものとなってしまった。正久は山を削って絶壁をつくったり,二の丸・三の丸もつくり要害堅固な城にしていった。
 そのころ鹿野城を守っていた亀井新十郎はまわりの城を次々と攻め落とし,勝山城も手に入れようと策をめぐらした。
 ある日のこと,わざと勝山城の将兵に見られるように多くの兵を繰り出して河原に待機させ,夜営をするかのように見せかけた。それを見た勝山城の正久は,
「攻撃して来るのは明日の朝だ。今,城は手薄になっている。夜討ちする絶好のチャンス。」
と,わずかな兵を残して鹿野城に迫った。ところが,
「殿,一大事でございます。わが勝山城が燃えています。」
 新十郎は,裏の裏をかいて勝山城を落としたのだった。

 この城跡は,西国三十三か所観音霊場として,また,「勝山城跡公園」として整備され,人々に親しまれている。地元である勝見では,毎年5月,10月の2回清掃活動を行っている。清掃といっても,雑草を取ったり,落ち葉の除去をしたりするのが主な仕事である。
「このクモはなんだかいなあ。」
 黄色と黒の斑模様のクモを見つけて尋ねられるが,私もわからない。
「阪神タイガースみたいなクモだなあ。」(家に帰って調べてみるとナガコガネグモに似ていると思うが,はたして?)
 よく見ると,コオロギもいる。ウマオイのようなバッタもいる。
「イバラを花に持って帰りませんか。」妻が図書館の花を生けているのを知っている人が私に言ってくる。
「サルトリイバラのいいのがある場所を知っていますから,今日はいいでしょう。」
「この木は何の木だらあかい。」
 振り返ってみると,ナナカマドのようだ。そういえばこの山にはナナカマドがたくさんあったと思う。ああ,ここも自然の宝庫だ。

 頂上は本丸のあったところで,広さは「東西三十間(約54m),南北七〜八間(13〜14m)」浜村の町から日本海まで見渡すことができる。
 お寺の近くまで下りるとツワブキがたくさん咲いている。やや日陰を好むこの花は,いかにも鮮やかにまわりを照らしているかのようだ。学名はFafugium japonicum。わが国の古典植物の一つである。