そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.508  瑞穂散策

 町誌の編集作業が大詰めを迎えた。といってもまだそろわない原稿もあるので,私の頭の中での大詰めである。1200ページの原稿すべてが頭の中に入っているのではないが,輪郭がはっきりしてきたということだ。

「先生,昔の農具などを見に行きませんか。」
と,編纂委員のWさんが言う。
「そうですねえ。一つ一つの農具や民具の写真はあるのですが,ある程度まとまったものが展示してある所がほしいですねえ。」
「岡田家にありますから。」
ということで,郷土史に詳しいHさんと3人で一緒に出かけた。

 瑞穂は気高町の東南部に位置する文字通りの農業の盛んなところである。ここの岡田家は旧家で知られた存在だが,当主は今,家をそのままにして出ておられるらしい。
 鍵を管理している親戚の家を訪ねると「開きますから」ということ。でも,たびたび盗難に遭っているということだった。
 玄関に駕籠がぶら下がっている。3代前の当主に賀露(鳥取市の漁港・浜村までの距離はその当時だと20kmはあったのではなかろうか)から嫁いできたお嫁さんが乗ってきたものだという。
「賀露からねえ。たいへんですねえ。」

 農具も私にとっては珍しいものがたくさんあったが,やはりずいぶん少なくなっているという。
「鳥取市で保管するということで大分持ち出されました。」
「浜村地区公民館で保管するということでしたが,アスベスト問題があって,その後どうなったか分かりません。」
こんなところまでアスベストが影響しているのか。
 いくつかの農具などを写真に収めて,帰途に着く。ついでだからと,瑞穂地区の旧跡観察。辻堂,普賢堂などを見てまわる。町内文化もやっぱり見ておいたほうがいいのだろうな。