目には青葉山ほととぎすはつ松魚(がつお) 山口素堂
どこかでホトトギスが鳴いている。
万葉集から今日まで,この鳥くらい文学に取り上げられている鳥はないのではないか。また,あの特徴のある鳴き声も「特許許可局」「テッペンカケタカ」など,その鋭さをうまく表現していて,よく知られている鳥のひとつであろう。
話は少し前のことになる。校長の仕事のひとつに全校朝会の講話があった。ある日の全校朝会で私は小鳥の話をした。
私は全校朝会の話に小道具をよく用いた。話を聞くだけではわかりにくいことも,実物を見せたり,話の要点をカードに書いて示したり,ぺープサートを準備したりなどなど。大人だって話を聞くだけでは退屈してしまう。せっかく私に与えられた時間なのだから,子どもたちにしっかり聞いてもらうための工夫をおしんではならない。
このとき私はテープレコーダーを準備した。そして,あらかじめ編集しておいた小鳥の鳴き声を聞かせた。鳴き声はできるだけきれいなものがほしかったので,「朝日・自然科学教室 高原の野鳥」(全3巻)の中から,ウグイスとカッコウとホトトギスを選んだ。この辺りでもよく聞かれるものだったからである。
「なんという鳥が鳴いているかわかりますか。」
多くの子どもたちがわかったのはウグイスだけである。カッコウもホトトギスもほとんどの子どもたちは答えられなかった。もちろん鳴き声を聞いたことはあるが,それがなんという鳥かがわからない。鳥の名前さえも知らない子もある。意識して聞くことがない。覚えることがないのであろう。田舎に住んでいながらこれだからなあと,つい思ってしまう。
花でも鳥でも「名前など知らなくてもいいじゃないか」と言う人もあろう。しかし,名前を知ることによって親しみが増すことは誰しも認めるところだろう。
名前を知ることによって花はより美しくなり,鳥の鳴き声はよりさえわたるのかもしれない。そのことにより,生き物への親しみが増し,自然への理解が深まる。そう思いませんか。
(2002.6.20) 【写真はニワゼキショウ わかりますか】
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