そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.515  トルコ・エジプトの旅5

トロイ遺跡
 よく知られているトロイの木馬の話。しかし,その遺跡は紀元前から紀元後にかけて九つの遺跡の積み重なりの中の一つでしかない。
 この地に初めて集落ができたのは,紀元前3千年のころ。その後,繁栄と没落が繰り返され,紀元後4百年までの間に九つの時代の都市層が重なり合った。
 石積みの城壁にはさまれた狭い通路が続く。通路の途中には門を設けたり,角(かど)をつけたりして外敵を防いだ。日本の城下町と同じような考えだ。

 ホメロスの叙事詩の中の古代都市を信じて,私財をなげうって発掘に成功したシュリーマン。しかし,後の学者はそのやり方を評価しないという。つまり彼は金儲けのために発掘をしたというわけだ。発掘の仕方も横に横にと掘り広げているので,どのように遺跡が積み重なっているのかが分からないという。また,彼が発見してドイツに持ち帰った財宝は,すべて消息不明になっている。

 直径1メートルあまりか,レンガを積み重ねた丸い筒のようなものがいくつかある。
「これはなんでしょう。」シナンさんが尋ねる。
「煙突かな。」
「ここは生贄の儀式に使われた場所です。これは供え物の血を貯めるための井戸と,流すための井戸といわれています。」
 音楽や劇,会議が行われていた小劇場もきれいに残されている。屋根も付いていて音響もよかったらしい。
私たちのグループの中には歴史に詳しい人もいて,なかなかよい勉強になる。

 ぐるりと見て回って,木馬の近くに出た。添乗員の前川さんが,
「そこの郵便局で両替ができますよ。」と教えてくれた。
「おうおうトルコの郵便局,サービスがいいねえ。」
手元のトルコ・リラがだんだん少なくなっているので, 5千円(1トルコ・リラ=約80円)ばかり両替する。
 トロイの象徴である木馬。退却していくギリシア軍が残した木馬に,まさか兵が潜んでいるとも知らず,夜襲を受けてトロイは陥落した。1975年に復元された木馬は,当時の大きさを再現したものだという。中に入れるようになっていて,階段を上って上まで上がることができる。

 ここからこの日の宿泊地アイワルクまで,150kmバスの旅である。

【質問】木馬の窓から顔を出しているのは誰でしょう。