そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.516  トルコ・エジプトの旅6

エフェソス再び
 朝4時半起床。テレビは日本の放送が入らないので日本で何が起きているのか全く分からない。まあ,ヨーロッパでニュースになっていないのだから,平和な毎日なのだろう。おかげで毎日メモの整理ができるし,早く眠りにつくこともできる。非常に健康な生活だ。
 モーニングコール6時,荷物出し7時,出発8時。もちろんそれまでに朝食。みんなが慣れてきて,だんだん早く食事に集まるようになった。外は霧が出ていて,少し寒い。朝の散歩にエーゲ海を眺める。波はなく,心なしか水は温かい。こんな日はいい天気になるかもしれない。
 今日はエフェソス(これはギリシア語,トルコ語ではエフェス)の遺跡観光である。三年前の8月にもエーゲ海クルーズのコースに入っていた。今回はアイワルクから南下して,山越えをしてこの遺跡を訪ねることになる。したがって同じ所を見ても違ったところに向かっているような気がしていたが,遺跡を見下ろす位置に立ったら思い出した。あれは暑い暑い日だった。今回のガイドのシナンさんも,
「トルコ観光のベストシーズンは7・8月と言いますが,それは夏休み中の観光を中心とする欧米人の考え。とても暑くてベストとは言えません。ほんとうのベストは9・10月ごろ。今がちょうどよい。」
と説明している。
 エフェソスは世界遺産ではないが,山全体が遺跡の町。大理石の道,神の彫像,古代図書館,水洗便所,娼婦の館,大野外ステージ等々,非常に保存状態がよく現在も発掘が続いている。ギリシアもそうだったが,ここトルコも遺跡が非常に多いため国の力だけでは発掘がなかなかできないという。特にトルコは,隣国の状況(中東諸国と接している)から軍備に力をいけないとシナンさんは説明する。少し前までは国の全予算の50%を軍備に当てていた,現在でも30%を占めているとか。従ってとても多くの遺跡発掘には金が回らないという。
 朝の霧は晴れて,暑いばかりになった。でも2度めのエフェソスということで,余裕を持って見られる。遺跡の周りに咲く花のいくつかを見ることもできた。この花たちのこともまた何かの形でまとめてみよう。
 2万5千人を収容できるという野外ステージを出てバス乗り場へ。ああこの道も思い出した。この日の長旅の終着点はパムッカレ,温泉に溶け出した石灰岩が岩の表面を覆って真っ白な岩の棚を作っていると言う。この旅の一つの見所である。
「さあ,そろそろ見えてくるころですよ。」シナンさんの言葉に私たちはきょろきょろと辺りを見回した。

【前回の答】もちろん妻である。写真を撮っているのが私なのだから。