そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.517  トルコ・エジプトの旅7
パムッカレ
 朝5時起床。外はかなり冷え込んでいるが,室内は暖かい。窓から外を見ると,まだ真っ暗な空に三日月(と思ったけど暦が合わないから25日ぐらいの月か)が高校と冴え渡っている。朝食の時間を限定しなかったため,早い人はどんどん済ませる。というのはここのホテルは外人(私たちも外人)がいっぱいで,食堂がすぐいっぱいになってしまうのだ。だから早起きの人がどんどんやってくる。
朝食はどこともバイキングだが,種類が少ない。チーズやハム,パンは豊富だが,それ以外のものが少ない。おまけに,「生野菜も生水で洗ってあるので,お腹をこわす原因になります」,などと注意を受けているものだから困ってしまう。それでも私はあまり気にしないほうで,最初の日からトマトなどは食べていたのだが,食べるものがないという人もある。毎日オリーブが出るが,慣れない人二はあの癖が気になる(これも私は平気で食べた)。日本からインスタント食品を持ってきていても,ポットがない。もってくればよかった,と思っても後の祭り。
パムッカレの手前にあるヒエラポリスを見学。円形劇場やローマ浴場が残る。ローマ時代の遺跡である。多くの王族の墓も出土しているが,まだまだ全体像は明らかになっていないらしい。
さて,世界遺産パムッカレは石灰棚の奇観を誇る。「パムッカレ」とは「綿の城」の意。「山の上から湧いている天然温泉が下の平原に流れ込む間に冷却され,含んでいる炭酸カルシウムを残し,まるで水の流れのような形をしている石灰の台地が作られた」とパンフレットにある。真っ白な岩肌が白く輝いているようだ。素足に白い岩は痛いばかりに冷たい。
「温泉など出てないじゃないか。」
母親と歩いていた日本人の女の子が盛んに「痛い,痛い」を連発。母親は「ふだんから鍛えていないからよ」。でも,本当に痛く,冷たい。しばらく下ったところで水が温かくなった。「ああ,いい気持ちだ。」
シナンさんの説明によると,温泉が不足してきているため流す湯の量を国が管理し,調節しているのだそうだ。みんながほっとした表情で岩の上を歩き回る。
ここでもこの厳しい環境の中に,いくつかの咲く花を見つけた。写真を撮っている私に,
「植物に興味がおありなんですか。」と,グループの女性が尋ねる。
「ええ,少し。」と私は答える。
「私も自然観察の会に入っていまして。今月は御嶽山に行く予定だったのですが……。」鳥取の仲間ではないが,こんなところでも話の花が咲く。
 パムッカレを出発してバスは一路コンヤへ。約410kmの道のり。昼食や休憩を挟んで9時間くらい。標高1000mくらいのトルコ高原を走る。オリーブなどの農産物は見えなくなり,牧草も刈り取られているのか何もない。砂漠と同じである。シナンさんはイスラムの話を始めた。