そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.53 梅雨

  梅雨さびし夢の中にも降ってをり  石見静々
 

 今年は,台風4号のおかげで,気象台もすんなり梅雨入りの発表ができたようだ。
 暦の上では「入梅」という言葉が雑節の一つとして使われていて,6月11日となっている。もちろん暦通りにはいかないから,この「梅雨入り・梅雨明け」については気象台は毎年頭を悩ませているようだ。
  
 何年か前になるが,なかなか梅雨明けの発表ができなかったことがあった。結局「明けていた」ことにしたのだった。そこで,最近の用語「……地方は梅雨入りしたと思われる」「……地方の梅雨は明けたと思われる」というような発表をするようになった。
 梅雨の現象は東アジア特有のものだといわれる。そして,その研究は日本の気象学者により明治の初めから進められたが,まだまだ多くのなぞが残されているという。(『日本の天気』高橋浩一郎著 岩波新書)
 梅雨の予報の難しさはそんなところにあるらしい。

 さて,今年の梅雨も「梅雨入り」して2・3度の雨はあったが,夏のような暑さが続いた。「真夏日」「熱帯夜」の日も何日かあって,ひょっとするとこのまま「梅雨明け」か,今年は「空梅雨」かと思われた。しかし,一転してここ数日は寒い。気温は平年に比較して5℃から8℃も低い。いわゆる「梅雨寒」「梅雨冷」である。しとしとと雨も続いて,やっと梅雨らしくなった。

「日本は雨の国であるから,強さにより,季節により,また降り方によって降る雨にいろいろの呼名が出たのは自然である。ちょっと思い浮かぶだけでも,春雨,さみだれ,梅雨,秋雨,秋霖,夕立,雷雨,俄雨,しゅう雨,村雨,時雨,地雨,霖雨,霧雨,小雨,強雨,大雨,豪雨,みぞれ,凍雨,雨氷,狐の嫁入り,天泣,木雨など二〇は楽にあげられるのである。」(上記『日本の天気』)
 さすが気象学の先生,よくもあげられたものだ。この中で梅雨に似合うのはどの雨か。

 もともと農業国の日本には必要な雨であり,梅雨の季節である。「梅雨末期の豪雨」の被害は歓迎しないが,水不足が最近問題になることもあわせ考えて,しばらく我慢するとしよう。そのうち「梅雨の晴れ間」もあるだろう。
             (2002.6.26)