そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.530  トルコ・エジプト悠久の旅19

自由は不自由
 ナイル川ファルーカに乗るという。ナイル川に浮かぶ帆船のこと。旅行パンフレットによると,「穏やかなナイルの流れに,白い帆のファルーカが浮かぶのどかな風景」とあるが,とても「白い」とはいえない帆のヨットである。私たちのヨットの操舵は日焼けしていかにも船乗りといった感じのおじいさん。サービス精神旺盛で,写真を撮ろうとすると,ふざけてばかり。帆を操るのはその孫とも思われる少年だった。ナイルにかかる橋は橋桁が低くヨットの帆柱はくぐれない。従って橋から橋の間をぐるぐると回っているのである。別にガイドの説明があるわけでもない。ナイルの水は濁っているので底は見えない。動力つきの観光船も何艘も行き来している。音楽を鳴らしていたり,歌を歌っていたり,ナイルはとても賑やかい。

 帰国出発前日の夕食は中華料理だった。日本人好みの味付けにしてあるのか食べやすい料理だった。お茶を何杯も飲みながらご飯も食べた。
 この日は誕生パーティーも行った。旅行中に誕生日を迎えた人が2名あった。グループの人で全部段取りをして楽しい雰囲気になった。レストランもその雰囲気作りに協力してくれた。お互い名前も住所も職業も家族関係もあまり知らない人の集まりで,この旅行が終わったら再び出会うこともないだろうけれど,こんなひとときを持つことができてよかったなあと思う。そんなこんなでふだんより15分ばかり夕食時間が長引いた。
明日は帰国の途につく。

 カイロ最後の日の午前中は自由行動だった。オプションツァーも予定されていない。トルコでは移動に何時間も費やしていたのだが,ここでは移動もない。従って1日の予定が4時ごろにはすんでしまうことが多かった。「なんだかもったいないなあ」といいながらも,夕方うろうろすることもできないから部屋で過ごす。
 最終日になってやっと自由行動となった。しかし,ホテルの周りには見るほどの何ものもない。遠くに出かけようかと思っても,交通機関の利用の仕方もわからないし,出かけるほどの勇気もない。外を見ると警備の人ばかりが目立つ。
「何にもできないよ。こんなところで自由に行動できるのは小泉さんくらいのものだろう。」
 荷物の整理をして,ホテルの周りを少し散歩しただけ。店もないから覗くこともできない。
 
 長い旅が終わった。ホテルのチェックアウト。部屋のミニバーの缶ビール代を払う。1つ2ドルくらいだから,ずいぶん安い。もっとも,この国でガソリンを買うと,1?10円,1か月の給料は1〜2万円とか(ガイドのアリさんの話)。
 いささか疲れた。13日というのはやはり長いかな。水風呂で風邪も引いてしまったし。エジプトポンドは空港の店で使い切ったが,ドルが残ってしまった。そうだ,カイロではあまり買うところがなかったのだ。金の店とパピルスの店しかなかったからなあ。まあ,ドルはいつでも使えるから,今度の旅行に残しておこう。   終わり