そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.539  本・幾冊か

 最近いただいた何冊かの本がある。
『ふるさと鳥取の横顔』は,気高町誌編纂委員の一人濱田英一氏の手によるものである。濱田氏は高校の社会科の先生を退職されて,郷土史家として活躍しておられる。何冊かの著書も出しておられて,町誌編纂についても町の交通,通信,観光などの歴史的考察を一手に受け持って書いておられる。その取材,執筆活動の熱心なこと実にたいしたものだ。
 今回の発行本には,町誌の記事と重なる部分もあるが,「数字が語る鳥取県」「陰陽道によるなぞ解き」「昔の美人と現代の美人」など新しい視点からのものも多い。新しい開拓を常にめざしておられるところに感心させられる。

『神様の注文』は,鳥取大学の先輩小寺雄造氏の12冊目の詩集である。この先輩との付き合い(という言い方は先輩に対して失礼かもしれないが)は,学生時代からだから,もう40年以上にもなる。いっしょに同人誌を出したこともあったが,私のほうが文芸活動から引いてしまったので,それ以後は儀礼的な付き合いしかない。それでも時たま詩集を発行したときなどには贈って下さる。私信に「数だけは十二冊目の詩集という事になりますが,チリは積もっても,所詮チリです。」
 ″いま″が/いちばん若い/と言った男があった/それから先は/ひたすら/老いるだけ,  だと―     「只今」より
 '02年から'05年までに詩誌に掲載したものの中から選んだもののようだ。人,生を斜に切って見る見方は相変わらずだが,詩風が少し枯れてきたかな。私の当たらない感想。

『青谷花暦』は,やはり大学の先輩池澤眞一氏の10冊目の詩集である。この先輩とも長い付き合いがある。今は町誌の編纂委員の1人で,文芸面を受け持っておられる。『花暦』は私も挑戦してみたい題材だった。「浜昼顔」「マンテマ」「酸葉」など、もっともっと書けそうな気がしてくる(ただし、気がするだけ)。
 その他池澤氏からは詩誌『灘』No.33・34も贈っていただいた。この中の鳥取県文芸年表(連載中)は,この人の素晴らしい仕事として残ることになろう。

 今日このページに取り組んでいたら,矢部公章氏から『七つの疑問詞』という詩集が届いた。大学では後輩に当たる。詩の同人の会で何度かお目にかかったこともあるのだが,詳しいことは覚えていない。1956年生まれとあるからそろそろ円熟期を迎えるころか。
「三月の季節こよみ」という詩がある。
 この冬/私の内にも雪は降り積もっていた/心の水脈は凍て/薄明の時間は立ちどまったままだった
 なかなかうまい。などという批評の目はもう私にはないが。身近な人の著した本に接して,またがんばるか。