そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.546  1月例会

 先週引いた風邪がようやく治った。今回の風邪は,私がよく引くのとちょっとちがっていた。私が年に1・2回引く風邪は,熱はそれほど出ないが,咳がひどく長引く。2・3週間も完治しない。ところが今回のは珍しく熱が出た。「これはインフルエンザかな」と心配したが,4・5日で楽になり,咳もほとんど出なかった。「楽な風邪」だった。
 しかし,ちょうどその間に鳥取であった「狂言」を見ることができなかった。茂山一門の鳥取公演が毎年行われていて,できるだけ見るようにしていた。もちろんチケットも買っていたが,近所の人にあげてしまった。

 今月は演劇鑑賞会の月でもある。今月は地人会特別公演『昨日までのベッド』。
〜 ロンドンのある邸宅。この家の女主人アルマ(鳳蘭)は,過去に二度の不幸な結婚歴こそあるものの,まあ,チャーミングといっていい中年女。今は独り身だが再婚願望は満々。今日は,こちらも男やもめで六十に手の届こうというヴィクター(篠田三郎)をお茶に招いた。二人はヴィクターの妹の紹介で知り合ったのだ。(演劇鑑賞会パンフレットより) 〜

 二人は結婚することになるが,「セックスレス」という条件付きである。ヴィクターの息子ロビン(白井圭太),そのガールフレンドのエラ(福沢亜希子),従姉妹のペギー(北村昌子)なども絡んで物語は展開する。
 夫婦,男女の性と愛がテーマだから,ちょっとニヤニヤとなりがちだが,いやらしさはなく,実にコミックに仕上げて,見る者を笑いの渦に巻き込んで,言うべきことはきっちりいい,感じさせたいことはしっかり感じ取らせる。

 鳳蘭は1946年生まれ,ということはもう60歳に手が届くところ。篠田三郎も1948年生まれだから似たようなもの。ヴィクターのほうは50歳代だからそのまま演じればいいが,鳳蘭演ずるアルマは40歳くらいだからそうはいかない。しかし,なかなかどうして40どころか30といってもいいぐらいに見えるからさすが役者だ。どの演劇を見てもそのことには感心させられる。
 何年か前に東京で森光子主役の演劇を見たことがある。そのとき彼女は80歳くらいだったと思うが,とてもそんな年齢を感じることはできなかった。85歳になる現在も現役で活躍中。演劇人だけでなく,1つの道を修めた人は長く活躍する。

 前回の「ドライビング・ミス・デイジー」では,差別問題など考えさせられるテーマを持っていて,見ごたえがあったが,今回もまた,笑いのうちに考えることの多い演劇であった。次の例会「殺陣師段平」(青年座)は3月14日。風邪など引かないように気をつけて楽しみに待とう。