梅雨まだ晴れず 清水行人
花の香に酔いしれて
蝶は沈む
深く 深く
花芯に口吻を立て 羽をたたんで
7月 雨やまず
海峡に日は沈む
あの日マラッカの町は赤く燃えていた
わたしたちは黙ってそこに座ったまま
見つめていたのだった
黒々と沈む町
人の住まないビルの中
心の奥深く 突然の驟雨(スコール)
ひらりと翻して
蝶は舞う
雨の止み間に空高く
その高さから見えるのは
うごめく人影 喧騒の町
すがたを変えて
蝶よ
どこへ行こうというのか
果てしなく続く油椰子の林
ときどきゴムの木 バナナ ココヤシ
その行きつく先に
安らぐところはあるか
照射する南の陽光に
わたしたちは喘いでいた
7月 雨まだ止まず
蝶 飛ぶ (2002.7.4)
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