空の山通信11

No.561  東菜奈講演会

 「近況2」でも書いたが,4日(土)に東菜奈講演会を開催した(「近況2」で「東奈菜」としているのは誤り,「菜奈」が正しい)。気高子ども読書推進委員会と気高図書館の共催なので,1時間ばかり早く会場に行ってみると,もう何人もの人が準備に来ていて,大体のことは終わっていた。図書館からは6人の職員のうち5人も来ている。その他,委員会のメンバーとその関係するボランティアグループの人たちも大勢準備にかかっていた。気高図書館ボランティアと読み聞かせボランティアの人たちである。
 この図書館のボランティアグループの人たちはまとまってよく働く。「気高図書館は小さな図書館だが,駐車場とこのボランティアの活動はずいぶん大きい」と私は常々思っている。

 従って私のする仕事はもうあまり残っていないで,挨拶さえすればそれでよかった。
 気高子ども読書推進委員会のこの2年間の活動について簡単にふれ,東奈菜さんのことについて私の読書感想を少し加えて話す。後は司会者と講師紹介の人に任せておけばいい。
 講師紹介の池本さんは大の東君平・菜奈ファンで,このたびの講師の交渉一切を引き受けてくださった。会場は市役所気高総合庁舎(旧役場)2階の大会議室,といえば固い感じだが,椅子だけなら100人くらいは入れる広さで,4・50人ならゆったりできる。特に市との合併のあとは人員削減のため,この2階は使われることが少なくなってしまった。
ただで使えるのだから大いに利用すべきだ。

「親を知って自分を知る」という演題で菜奈さんは話し始めた。「親」とは父君平さんのこと。私が読んだ「風を待つ少年・東君平物語」を中心にした話だった。これを書くにいたった経緯,取材などについて初めに話された。経緯については生きていれば還暦の2000年にまとめた,と本にも書いてあったから知っていた。
 しかし,一冊に仕上げるための取材活動をしたとは知らなかった。多分本人から聞いたか,母親から聞いていたものを中心にまとめたものだろうと思っていたのである。
「ほとんど少年期,青年期のことを聞いたことはなかった」という。従って現地に行って聞いてまわったものをまとめたのだそうだ。
「点と点は集められます。でもそれをつなぐ線が見つからないことがある。そこは自分の思いでつなぐしかない。フィクションです。そのとき父を感じます。私の手を支えている父を。」
「皆さんもたどってみてください。将来のことは分かりません。でも過去のことは分かります。親のことでも自分のことでも,取材し,まとめ,残すことをしてみてください。」

 演説調でも朗読調でもなく,時には思い出しながら,時には君平のメモを読みながら静かに話す1時間20分だった。