No.570 昔の仲間

 銀行で金を下ろす手続きをしていると,隣の窓口で,
「これを両替してください」
と,言っている人がある。「銀行での両替は手数料を取られるのになあ」と思ったがそれ以上は考えず,自分の作業を続ける。
「おお,こんにちは」。
「えっ」と思ってみるとM君だった。大学時代の同級生で,彼は同じ年に校長になり,ちょっと体調を崩したため1年早く退職したが,今もことあるごとに話をする仲間である。最近は「集落誌」の編纂をしているということで,町誌を編纂している私のところにも,資料を求めて何度か訪れている。
「どうした,金があり過ぎて困っているんじゃないか」
冗談を交わす。

 この日は,「鳥取市図書館運営協議会」の開かれた日でもあった。これは,地方自治体が条例で定めたその自治体が持つ図書館運営についての協議を行う場である。予算,設備,利用状況,職員,今後の見通しなどについて委員が意見を出し,図書館はその意見を今後の運営に活かしていくことになっている。私も委員の一人である。
 委員の中のJさんは,県校長会の『鳥取県校長会50年史』の編纂をしたとき県校長会の会長をしていた。私はそのとき編集委員としてたいへんな仕事を引き受けていたことを思い出す。
彼は今,町誌編纂委員のまとめ役をしていると聞いている。私と同じような立場だ。
「『町誌』はできたのですか」
と聞くと,「いや,まだまだ,今校正の最中」,
との返事,いずこも同じなのだな(気高町より1年早くできる予定にしては遅いな,と思う)。

 帰りに気高図書館に寄る。返す本もあったし,借りたいものもあった。いつものコーナーで書架を見ていると,
「おう」と,声がかかる。Tさんである。
教員先輩の彼は教頭時代鳥取県中部でともに校長として勤めており,その後もなぜかさまざまな場で顔を合わせることが多い。書棚に数冊の本が積み上げられている。
「何をたくさん借りておられるのですか」と見ると,全部「内田康夫」。前回会った時は「西村京太郎」だったと思うから,推理小説専門だな。
 
 この日はなぜか知己の人に会う日であった。