空の山通信11

No.586  シルクロード旅日記8

 4日目はまず高昌故城の見学。トルファン市街地の東約40qのところにある城址遺跡である。
 故城へはバス駐車場からロバ車を使うようになっていた。私たちは添乗員の瀬野さん,ガイドの季さんを含めて32名である。3台のロバ車に分乗。私たちの乗ったロバ車の御者は日本語が少し分かるらしく,ロバに,「がんばれ,がんばれ」と叫ぶ。ロバもそれが分かるらしくスピードを上げる。乗っている私たちは笑って「がんばれ,がんばれ」とまねするが,ロバにとってはつらいことかもしれない。

 故城に着いて「あれっ,瀬野さんがいない。」「どこ行っちゃったの。」「まあ,いいんじゃない。知らない所じゃないんだから。」
 添乗員だから,十分この土地のこともわかっていての行動と思われるので,私たちは季さんと見学を進める。(実はロバ車駐車場で待機していた,と後で聞いた)。
ここは7世紀初頭,僧玄奘がインドに仏典を求めて旅する途中,ここに2か月ほど滞在し,説法を行ったといわれる。交河故城が「粘土の山を掘り下げて作った城」であったのに対し,土を積み上げて作った城だという。外城,内城,宮城の3つの部分から構成されているというが損壊が激しい。

帰りもロバ車。「がんばれ,がんばれ」と御者の叱咤激励にもかかわらず,ロバはスピードが上がらない。後から来るロバ車に追い抜かれてしまった。御者の鞭がロバの背に当たる。(「いいよ,そんなにしなくても。『がんばれ』だけだとつぶれるよ」)。でも,この業界も厳しい。追い抜かれたロバ車は次の仕事は1回抜きである。御者にとっては収入にも関わることなので必死なのだろう。
「玄奘は旅支度を整えてくれた王に感謝し,インドへの旅の帰途,再び高昌国を訪ねようとしたが,すでに高昌国は滅ぼされ,その属州となっていた。(『NHKスペシャル新シルクロード1』より)」
 玄奘の落胆とロバの悲しみを重ねるのではないが,なんとなく哀れを感じる雰囲気である。

 アスターナ古墓群。墓地からは大量の絹製品,陶器,文書などが出土しており,壁画やミイラなども残っているという。見学可能な墳墓は3つだということだったが,そのうち2つを見学した。発掘中の墓もあったが,3人ほどの手作業でいつになったら終わるやら,という感じだった。