空の山通信11

No.588  シルクロード旅日記10

 カレーズ見学の後葡萄生産農家を訪ねる。トルファンの産業は農業が中心で,
特に葡萄は有名,ここの乾し葡萄は特産品という。なるほど,少し郊外に出ると,葡萄畑が広がっている。日本のブドウ畑と同じように,棚に蔓を広げる栽培法である。
 妙な小屋が建っている。レンガで積み上げた隙間だらけの建物である。「葡萄乾し小屋です」と説明がある。風通しをよくして時間をかけて乾した乾し葡萄が最高においしいという。

 農家ではおじいさんとおばあさん,若嫁さんと孫が迎えてくれた。お菓子とお茶が出てくる。もちろん乾し葡萄も出てくる。そのうち販売が始まった。「最高においしい」との触れ込みであるから売れるわ売れるわ。
 私はその間に家のまわりの様子を見に出かける。裏には葡萄畑が広がっている。でも,そんなに広くないから,他にも畑を持っているのだろう。
 旅行業者と生産者,うまくタイアップしてやっているのだろう。それが別に悪いというのではない。本場の味が味わえるよい機会となっているのだから,こちらとしても旅行のよい思い出であり,お土産を求めるチャンスにもなる。

 バスでトルファン駅へ。季さんから昨日問題が出されていた。
「トルファン駅はトルファンの街からから60km離れた所にあります。どうしてそんなに離れた所にあるのでしょう。」
 昨日の説明では,風が強いことを強調していた。それが街と駅とどう関係するかは分からないが,それかなと思ったが「ちがう」という。みんなが「うーん」と考えて答えが出てこない。
「昨日の説明の中でいったでしょう。トルファンは風が強い,寒暖の差が激しい,海面より低い所にある。低い所にある。」
「あっ,そうか」と分かったが,遅かった。つまり,列車はスタートで坂道を登ることは苦手なのである。だからできるだけ出発時の抵抗を少なくしようと60kmも離れた高地(トルファンから見て)に駅を設けたのだ。

 まっすぐなまっすぐな道を走って,日が暮れる。トルファン駅はもう夜。海外旅行での列車利用は何度目だろう。寝台車利用は昨年のトルコに続いて2度目だ。トルコではアンカラからイスタンブールまで2人1室だったが,今回は4人1室。「きゅうくつですから荷物はできるだけ少なく」と,添乗員の瀬野さんは言っていたが,まあそれほどではない。ビールを飲んで,4人で少し話をしていたが,眠ってしまった。

 夜中にトイレに1度起きて,夜明けになって目が覚めて,外は明るい砂漠が続いている。遠くに山が見えるから,村があるのかと思ってみるが,草木のない山が通り過ぎてしまうだけ。人は,いない。通り過ぎる駅に駅員が1人見えた。
 石ころや砂の砂漠が続いている。