空の山通信11

No.593  演劇二つ

 二つの演劇を見る機会を得た。
 一つは東京の劇団四季の「鹿鳴館」。息子たちに会いに上京したついでに観劇としゃれこんだ。なにしろ長男の家に向かう電車の中で広告映像を見て思いついたので,翌日の日曜日,席が空いているかどうかわからない。長男夫婦にインタへーネットで調べてもらい,電話で予約してもらった。長男は家の片づけが忙しく,夕方まで我々二人で行動。夜は次男夫婦もやってきて,みんなで食事の予定。

 土曜日は天気が悪く寒かったが,日曜日はいい天気になった。浜松町の駅から劇場まで歩く。以前ミュージカルを見に来たことがあるので大体の見当はつく。ただし,ミュージカルの劇場と同じところと勘違いしていたことに後で気がついた。ミュージカルをしているのは四季劇場「春」と「秋」であり,その隣の自由劇場が「鹿鳴館」をしている劇場だった。
 チケットをもとめて(A席5250円也),12時を回っているので昼食をとらなければならない。終演は4時を過ぎてしまう。サンドイッチ程度のものは中の売店で買えるので開演前にあわただしく立ち食い。
 席は満席,貸切バスでやってくる人たちも多い。もちろん,私たちのような県外の人も多いのだろう。

「鹿鳴館」は三島由紀夫の戯曲を浅利慶太が演出した演劇である。実は私は三島由紀夫の作品を読んだことがない。あの切腹事件しか頭の中にはない。そういうことからもちょっと興味のある演劇だった。もちろん小説や戯曲と演劇とは同じではないだろうが。
舞台は,題名の通り明治時代の鹿鳴館。大臣を務める影山伯爵の夫人朝子と,かつての恋人であり反政府派のリーダー清原の間に生まれた久雄を利用して,清原暗殺をたくらむ影山伯爵。それをとめようと夜会の主人をかってでた朝子。しかし,華やかに見える鹿鳴館の夜会には「裏の裏の人間模様」が潜んでいた。
 3時間たっぷり目を離せない舞台であった。

 もう一つの演劇は演劇鑑賞会の例会「アラビアンナイト」。
〜 むかしむかしの遠い国の話だが,「アリババと40人の盗賊」など断片的に聞いたり読んだりした人も多かろう。だまされて女性不信に陥った王様は,国中の娘と次々に結婚し,あくる日には死刑にしてしまう毎日を送っている。大臣の娘シャハラザードは妹に話を聞かせるからと,一夜に一話,千と一夜を語り紡ぐ。ある夜は面白おかしく,また,教え諭すように,しんみりと。その不思議な物語は次第に冷え切った王様の心を溶かし,一国を治める王がどうあらねばならないのかを悟っていく。

 プロローグからエピローグまで,九つの話を取り入れて,見ていて実に楽しい演劇だった。読書指導の「お話版」かもしれない。