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空の山通信11

No.611  城原海岸観察記

 6月の自然観察は岩美町の城原海岸で行われた。去年もこの近くの鴨ヶ磯で行っている。
 岩美町は鳥取県の北東部にあり,日本海に面して網代,田後(たじり),浦富などの漁港があり,水産業が盛んな町である。また,海岸線が複雑にいりくんだリアス式海岸になっていて,洞門,洞窟,奇岩がいたるところに見られ,観光地ともなっている。ちょうどこの時期海水浴場が開かれ,海水浴客も多く見られた。
 もう一つ紹介しておくなら,平成の大合併によって,以前岩美郡に属していた国府町,福部村は鳥取市に合併となり,岩美町だけが岩美郡に残ることになったのである。ちょうど町議会議員選挙が行われているところで,観察中も選挙カーが走り回っていた。

 まず浅い所の海に入って生物の採集である。清末先生は水着はもちろん,水中眼鏡,タモ,ヤス,シュノーケルまで準備して,少し沖の岩の周りを観察しておられる。会員はそこまでの準備をしていないから膝くらいまでのところの岩を中心に採集している。
 水はひやりと気持ちが良い。冷たいというほどではない。小さな魚が泳いでいるが,手では捕まえられそうにない。小さな蟹を3匹捕まえた。去年も貝も海藻も蟹も最後に汁にして食べたのだが,蟹はもさもさとしてうまくはなかったのを思い出した。
 貝は岩にくっついていて離れない。波が寄せてきて少し動きかけた瞬間を狙ってはがして採るが,なかなか採れない。特にカサガイの仲間は指の掛けようもない。そういえば去年はドライバーを準備したのだった。準備不足。がさごそと逃げて逃げ切れずじっと転がっているヤドカリなどを拾う。

 1時間近くたって集めたものを持ち寄った。
 最初に先生が「面白いものを見せましょう」と言って小さな海藻を取り出した。海水を入れた鍋にそれを入れて,少し水を揺らすとその海藻の表面(というより先端部分といったほうがよいか)が蛍光色に変わった。
「あれ?」「きれい」「なんで?」
「これは水の動き,波に刺激されて色が変わるのです。ワツナギソウという海藻です」

 それから貝の観察。カサガイの仲間のヨメガカサガイ,ベッコウカサガイの見分け方(貝の内側の色が違っている),ウノアシガイは貝の模様が鵜の足の水かきの部分に煮ていることから付いた名前,などの説明を受ける。
 マキガイの仲間としては,イシダタミガイ,レイシガイ,クボガイとヘソアキクボガイ,ウラウズガイ,ヒザラガイ,スガイ,チヂミホラガイなどであった。
 海藻の仲間では,ボウアオノリ,ツノマタ,アナアオサ,ホソムカデノリ,ダジア,スギノリ,ウミトラノオ,コナウミウチワ,ホソアミジグサ,テングサ,スジアオノリ,オオバモク,イシモズクなど。
 これらのほとんどのものは食べられるという(毒はない。うまくないものもあるが)。

 観察を終えて,いよいよ試食ということになったが,私はこの後演劇鑑賞会を控えていた。海水の付いた服装で会場に行くわけにはならず,この日の演劇の終演は9時半を過ぎるというので,夕食も済ませておきたいし,というわけで少し早く帰宅することにした。