そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.64 夏が近づいた 

  今年の梅雨はほぼ平年通りに入り,明けるようだ。天気予報も「この梅雨最後の大雨のおそれ」と言っている。
 今年の梅雨は,珍しく2つの台風が日本に接近・上陸し,かなりの被害をもたらした。この台風の動きをみて,「冷夏になるおそれがある」という予想もある。太平洋高気圧が弱く,1993年(平成5年)と似ていると言うのだ。

 1993年の冷夏は記憶に新しいところだ。この年梅雨明けは「特定できず」,6〜8月の低温(8月の平均気温は平年値より−2.7℃),日照不足(8月の日照時間は平年値の約半分)のため,農作物,夏用品,レジャーなど多方面に大きな影響を与えた(1994年『山陰の気象の暦』日本気象協会松江・鳥取支部発行を参考)。特に稲作の被害は大きく,米不足,日本に居ながら外米を食べることになった。

 ちょうどこの年の9月,札幌で全国図書館大会があり私も参加したのだが,札幌付近で目にする田んぼの稲は,もう収穫期なのに穂は垂れず,黄色く突っ立ったままだったのを思い出す。まさに宮澤賢治の「寒さの夏」だったのである。

 まあ100年に1回あるかないか,そんなことはたびたびはなかろうとは思うが,ないともいえないのが自然現象だ。現在南アメリカは,エルニーニョ現象による猛烈な寒波に襲われているという。
 と言っても心配ばかりしていてもどうしようもない。梅雨の高温と雨で草もぐんと大きくなった。妻が毎日のように草取りをしているが追いつかない。私も少しずつ復活することにした。しかし蒸し暑い。1時間もやっているとあせだらだら。

 蝉がそろそろうるさくなった。一句ひねってみるかと試みる。
 「ジッ」と鳴きあわてふためく油蝉(行人) どうもできはよくない。
 あの下手な鳴き声を上げていた蛙(No.43「蛙」参照)は,歌声もすっかりうまくなって,無花果の葉っぱの上に立派な青い背中を見せるようになった。(写真)

 今年は野菜の出来がすこぶるいい。トマトもキュウリもナスもピーマンもカボチャも二人では食べきれない。妻はせっせと息子のところに送っている。少々大きさはまちまちでも,形はいびつでも,無農薬,新鮮,手作りのうまさは間違いない。いよいよ夏だ。
 手作りの鼻曲りたる胡瓜かな  尾崎紅葉
                      (2002.7.20)