8月の詩 清水行人
風が一つ吹いて 今年の夏は行ってしまった 数々の思いを胸に残して 子どもたちは 白い波を蹴散らかして駆けまわるが 今日は 漁火が見えない あんなに遠く光っていたのに あんなに海を照らしていたのに
海に点々と黒々と あれは鮫 現代文明に海を追われ 逃げこんできた鮫たちの群れ 今に 鮫たちの復讐が始まるか
そのころ山では ツクツクボウシの祈りが 空しく木々の間を行き交い どこか遠くへと消えて行くのを 私は見ていた 【写真 大づつみと鷲峰山】 (2002.8.21)