そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.68 8月の詩 

                   8月の詩
                                清水行人  
   

                    風が一つ吹いて
                    今年の夏は行ってしまった
                    数々の思いを胸に残して
                    子どもたちは
                    白い波を蹴散らかして駆けまわるが
                    今日は
                    漁火が見えない
                    あんなに遠く光っていたのに
                    あんなに海を照らしていたのに

                    海に点々と黒々と
                    あれは鮫
                    現代文明に海を追われ
                    逃げこんできた鮫たちの群れ
   今に
   鮫たちの復讐が始まるか

   そのころ山では
   ツクツクボウシの祈りが
   空しく木々の間を行き交い
   どこか遠くへと消えて行くのを
   私は見ていた
          【写真 大づつみと鷲峰山】 (2002.8.21)