7月末から8月初めのギリシア旅行から帰って,2週間ばかりは旅行記のまとめにかかりきり,さらに手作りの本にまとめようと時間を取ったため,あまり読書が進んでいないことに気づいた。
この『空の山通信』も2日に1回上げているので,それにとられる時間も半端ではない。しかし,そのための読書ということもある。
No.76の「イナゴ」の〈飛蝗〉について『北海道の歴史』から引用したが,ずいぶん前にこのことについて,何かの作品の資料にしようと思って読んでいたものだった。そのときには作品にはならなかったが,自分で意識して読んでいる文章の内容というものは,頭のどこかに残っていて,ふと思い出されてくるものだ。『子どもと雀』も,No.75の「虫の声」に使った『子どもの歌を語る』もそうだった。
ホームページの文章を書きながら,そんな思いをしたことは二度や三度ではない。文章にまとめようとして,再び読む機会を得たり,新たに調べようと資料を漁って自分自身の考えを確認するのである。
そんな中で読んだ,なかにし礼の『てるてる坊主の照子さん』(上下 新潮社)はおもしろかった。『長崎ぶらぶら節』『赤い月』と読んできているので,この作品も逃すわけにはいかない。この作家の文章のうまさと易しさ,内容のおもしろさには感心する。
自分が話せる,書ける人は素晴らしいと思う。これは何も小説だけの世界ではないと思うが。どうしてこの小説には実在の人物がたくさん出てくるのか,と思っていたら,最後にたねあかし。なるほどということになる。
第127回芥川賞,直木賞が発表になった。とりあえず芥川賞『パーク・ライフ』(吉田修一)を『文藝春秋』9月特別号で読む。
この作者の作品を読んだことはないが,これまで4度候補に上がったことがあるというし,文学界新人賞,山本周五郎賞も受賞しているという。
文章がうまい。「選評」にも書いてあったが,日比谷公園での出来事を淡々と,実にたくみに描いている。しかし,ドラマがない。人間関係が乏しいのは,現代人の姿を映したものか。まあ,これも現代の一つの小説のスタイルか。
詩の本を読もうと思うが,詩集はなかなか手に入りにくい。『詩のこころを読む』(茨木のり子 岩波ジュニア新書)を読み始めた。「いい詩には,ひとの心を解き放ってくれる力があります。」という冒頭文が気に入った。
推理小説1冊も並行して読もう。 (2001.9.12)
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