そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.8 子どもの情景

  雪が降った。今年は暖冬傾向が続いて,正月に少し降っただけで暖かい1月であった。2月に入って久しぶりに雪。子供たちは早速外に出て雪だるまづくり,雪合戦。校庭で2年生が一生懸命雪を丸めて転がして,いくつかの雪の塊を作った。

 その時間はそれで終わり,午後はクラブ活動の時間になった。クラブ活動は4年生以上で実施している。スポーツクラブの子供たちは,チームを作って雪合戦を行った。ちょうど2年生が作った雪の塊は,格好の陣地となった。雪合戦は雪を投げ合うだけではない。お互い攻め合うわけだから,邪魔な陣地も当然攻撃の対象になる。蹴る,飛び乗って崩す。戦いは佳境に達し,どちらのチームも必死になって攻めた。

 その様子を悲しそうに,周りで見ている子ども達がいた。午前中雪を丸めて雪の塊を作っていた2年生であった。自分たちが一生懸命に作ったものが壊されていくことを悲しんでいるのだった。中には涙している子もあった。しかし,大きな学年には逆らえない。黙ってこらえている姿が痛々しい。

 職員室でその姿を見ていた先生が,クラブ担当の先生に声をかけた。

「後で直してやるのがいいじゃない。」

 クラブの先生も全く気づいていなかったようだ。早速全員を集めて事情を話した。みんなで2年生に謝ってもとの通りにしようということになったらしい。今度は4年生以上の子達が,一生懸命雪を丸める。指図するのは2年生だ。こうして初めより大きな雪の塊ができた。

 翌日の休憩時間,1年生が子の雪の塊に群がった。何しろ不可思議な塊である。やはり蹴ったり上に乗ったり。そのとき2年生が現われた。彼らがどんなやりとりをしたかはわからなかったが,1年生は蜘蛛の子を散らすように去っていった。

 掃除の時間,2年生に尋ねる。

「いったい何を作ろうとしていたの。」「かまくら。」「だったらもっと積み上げなきゃあだめだよ。」「うん。」

 考えていたものはできあがらなかったが,みんなに認めてもらって満足しているようだった。

 その後暖かい日が続いて,校庭の雪はとけた。最後までとけ残っていたのはこの雪の塊だった。