赤とんぼ
飛んでいたから見えなかったなんて
あんなに大きな目玉で
見えないはずはないのに
見えなかったなんて
知らなかったなんて
体が鋭く尖って浮いていた
なぜ群れて
同じ方向に向かって飛んでいるのだろう
浮き上がるように
ああ そこには同じ思いがあった
負われて見たのは
追われて見たのは
なんだったのか
見えなかったなんて 分からなかったなんて
ふと留まる
留まって考える
首をかしげて
この冷たい空気の中に何があるの
分かったような顔をしたって
みんなに知られているのだから
飛んでいたから見えなかったのだろう
飛んでいたから分からなかったのだろう
なんて
複眼ならいくつも見えただろうに
何も見えないだなんて
目に映る山も赤く燃えていた
眼下の景色だって
同じ思いが燃えていた
そしてこれから どこへ 行こうというのか
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