そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.92 10月の詩 

 
 10月の詩
  
  神無月     清水行人

神のいない月があるという
ということはほかの月に神はいたのか
いったいあなた方はどこにいたのか
なにをしていたのか
こんなに世界はごたごたしているのに
あなた方はそれを見殺しにするというのか

自然が壊したものは自然が何とかするさ
暑かった今年の夏もどこか遠くへ去って
突然霰が降ってきたりして
気がつくと背中に寒さが張りついている
自然はどこかでうまくやって
帳尻を合わせているのさ
でも
人間が壊したものを 
人間は何とかするだろうか
自分の意志と自分の表現方法を持ったために
自分を見失ってしまった
人間たち

だから神は
この国に
八百万もいるというのに
誰も振り向きもしない
カラカラとつるべを
うっかりおとしてしまった井戸の中に
ぽっかりと月が一つ浮かんでいる
10月

    (2002.10.12)